2015 Fiscal Year Annual Research Report
メソポーラスシリカ粒子を利用したコロイド超格子結晶の構造制御
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15J06919
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 瑛祐 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | メソポーラスシリカ粒子 / コロイド結晶 / 超格子結晶 / 細孔径拡大 / 表面修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 研究目的 : 3次元フォトニック結晶は、その周期性を多様に変化させることで、負屈折率や光局在化などを実現すると期待されている。そこで、この3次元フォトニック結晶の構造制御に向け、2種類のコロイド粒子の集合で形成されるコロイド超格子結晶が注目されている。本研究では、多様な結晶構造のコロイド超格子結晶の作製を目指す。 2. 研究手法 : 粒子が自己集合する際に2種類の長距離引力が作用する場合には、複雑な構造を組むことが理論的に示されている。本研究では、コロイド状メソポーラスシリカ粒子(CMS)への磁性物質の導入により磁気的相互作用を、電荷を持つ有機官能基の修飾により静電的相互作用を独立して制御し、新規構造のコロイド超格子結晶の獲得を狙う。本年度は、相互作用を制御するために必須であるCMS自体の基礎設計を目標に研究を推進した。 3. 研究成果 : CMSを利用した相互作用制御に向け、①細孔径を拡大し、内部に機能性ナノ粒子を導入する ②CMS表面に分散性を維持しつつ有機基を導入する という2つの手法を適応した。 ①細孔径拡大によるゲスト種導入: 単分散CMSは多量の界面活性剤存在下で、シリカ源を2段階に分けて加水分解・重縮合させることで得られる。この際、2回目のシリカ源添加前のみに界面活性剤ミセルの膨潤剤を添加することで、単分散CMSの細孔径の拡大を達成し、コロイド結晶の構築に初めて成功した。このコロイド結晶に金ナノ粒子を導入すると、コロイド結晶の粒子間隙に規則的に金ナノ粒子が配列した構築体の作製に成功した。 ②有機基修飾: CMSへの多様な官能基導入には、CMSを有機溶媒に分散させた後に表面修飾する必要があるが、分散媒は水やエタノールに限定されていた。本研究では、CMSの分散力に関する基礎調査を行い、透析の利用により様々な有機溶媒にCMSを分散させ、有機修飾する新規手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
①細孔径拡大によるゲスト種導入: コロイド結晶を構築しうる単分散性および分散安定性を持つCMSの細孔径を制御することは、粒子間相互作用を制御する上で極めて重要な課題である。本年度は、単分散CMSの形成過程における粒径分布の変化プロセスを詳細に考察することで、単分散性を維持しつつ細孔径を拡大し、そのコロイド結晶を作製することに初めて成功した。また、このコロイド結晶のメソ細孔内部にナノ粒子を導入する過程で、コロイド結晶の粒子間隙に規則的にナノ粒子が配列した構造体(超格子結晶)が得られた。この手法を利用することで、これまでに報告の無い新規構造の超格子結晶の作製にも成功しており、今後様々な構造の超格子結晶を作製することが可能な非常に価値のある成果であると言える。 ②CMSの分散媒制御および有機基導入 : 本年度はCMSの分散性を維持しつつ、様々な有機基を導入する手法の確立を目指した。従来、CMSは水やアルコールにしか分散しておらず、官能基導入すると、その種類や量次第では凝集が促進されることが知られていた。そこで、我々はCMSを透析により様々な有機溶媒に分散させる新規手法を確立した。その有機溶媒分散したCMSを有機修飾したところ、得られたCMSの分散性と修飾密度は、最高レベルに近く、本研究項目は当初の計画以上に進展していると言える。また、CMSを有機修飾する過程で、有機架橋型シリカ源を水溶液中で滴下したところ、中空状粒子を作製することにも成功した。さらに、フェニルトリエトキシシランを滴下したところ、単分散ヤヌス型ナノ粒子の作製にも成功した。これまで、CMSで構成されるコロイド結晶は、単純な球状ナノ粒子に限定されていたことから、これらの粒子を利用することで、様々な結晶構造のコロイド結晶の作製にも進出していくことが可能になると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はメソポーラスシリカナノ粒子を用いてコロイド超格子結晶を作製するための技術的基盤を確立し始めた。さらに、来年度はコロイド超格子結晶の作製に向けてさらに2つの基盤研究を推進する。
(I)メソポーラスシリカナノ粒子への磁性ナノ粒子の導入:本年度の検討で、メソポーラスシリカナノ粒子に磁性ナノ粒子を入れるには、メソ細孔の細孔径が小さすぎることが分かっている。来年度では、本年度に作製法を確立した細孔径拡大メソポーラスシリカナノ粒子に磁性ナノ粒子を導入し、コロイド結晶化することを検討する。 (II)コロイド超格子結晶の作製:申請者はすでにメソポーラスシリカナノ粒子の厳密な粒径制御に成功しており、2種類の粒径の異なる粒子を混合させることで容易にコロイド超格子結晶が得られることを昨年度は想定していた。しかし、粒径分布の厳密性が不足していたためか、超格子結晶の獲得には至らなかった。来年度はメソポーラスシリカナノ粒子のさらなる単分散性の向上を目的に、合成条件の最適化を図る。
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Research Products
(14 results)