2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J06932
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊地 翔太 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 小惑星 / 軌道運動 / 姿勢運動 / 重力 / 太陽光圧 / 太陽同期軌道 / 太陽追尾運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
小惑星は重力が微小であるため,小惑星近傍での宇宙機の運動は,太陽輻射圧などの外乱の影響を受けやすい.加えて,小惑星は一般に歪な形状をしているため,重力場が不均一である.これらの理由で小惑星周りでは,宇宙機の軌道運動と姿勢運動は強く乱される.本研究ではこのような強摂動環境下でも,安定な軌道・姿勢運動を達成するような準周期運動を解析している.平成27年度までの研究では,宇宙機を質点でモデル化し,軌道運動のみを解析していた.しかし,現実には宇宙機の姿勢が変化することで,太陽光圧の影響が変わるため,宇宙機の軌道運動と姿勢運動はカップリングする.そこで,平成28年度は宇宙機を剛体としてモデル化し,小惑星周りでの準周期的な軌道-姿勢カップリング運動について研究を進めた. 本研究では,小惑星周りの強摂動環境下で,太陽に対する幾何関係が一定となるような太陽同期軌道と,太陽に対する姿勢が一定となるような太陽追尾姿勢運動を同時に達成する手法を提案している.初めに,太陽光圧と歪な重力場の影響を受ける軌道運動をラグランジュの惑星方程式でモデル化し,太陽同期軌道を解析的に設計した.次に,太陽光圧トルクと重力傾斜トルクの影響を受ける姿勢運動を線形化されたオイラー方程式でモデル化し,太陽追尾姿勢運動を達成する条件を解析的に導出した.最後に,これらの解の妥当性を検証するため,軌道-姿勢カップリング効果を考慮した非線形な運動方程式を用いて,軌道と姿勢運動を数値的にシミュレーションした. これらの研究プロセスにより,提案する宇宙機の運用手法が,実際の小惑星探査ミッションにおいて有用性・実用性を有することが示された.本手法を用いると,燃料を使用することなく,宇宙機の軌道・姿勢を安定に保つことができるため,小惑星探査ミッションにおいて宇宙機の軽量化や長寿命化に貢献し得る.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
宇宙機の姿勢運動についての解析を行うことで,従来の準周期軌道に関する理論をより現実に近いモデルに拡張することができた.これにより,今まで見出されていなかった,小惑星周りの特異な軌道-姿勢カップリング運動を導出することができたため,本研究は大きく進展したと言える.また,運動の解析を解析的なアプローチと数値的なアプローチの両面から行うことで,理論に汎用性を持たせながらも,運動の厳密な評価が成されたことは特筆すべき事項である.
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに行っている小惑星周りの準周期的な軌道-姿勢カップリング運動は,フィードバック制御を加えない自然運動についての解析である.しかし,軌道運動と姿勢運動がカップリングするという小惑星近傍特有のダイナミクスを利用すると,姿勢運動の制御だけで軌道と姿勢を共に安定な状態に変化させ得る.このような制御理論の構築と,シミュレーション行うことが今後の方針である.
|
Research Products
(5 results)