2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J06971
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仲宗根 卓 京都大学, 公共政策連携(研究部), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 武力紛争法 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度における本研究は、当初、国際法(とりわけ武力紛争法)における相互主義の基礎概念の整理から開始する予定であった。しかし、9月に名古屋市で開催された国際法学会2015年度研究大会のパネル公募セッション(サイバー活動と国際法)への応募が採用されたため、急遽学会の報告準備から取り掛かることにした。 国際法学会における報告では、サイバー活動を武力紛争法の観点から網羅的に評価を行った。すなわち、サイバー活動の新奇性(例えば、手段自体が非物理的、行為者の特定が困難等)に鑑みて、武力紛争法上問題となりうる論点を整理し分析結果を報告した。報告では詳細に述べることはできなかったが、サイバー活動はその新奇性から、相互主義に関していくつかの興味深い論点を内包していることが分析の過程で明らかになった。例えば、交戦相手の特定が困難な状況において、従来のように相互主義が武力紛争法の履行確保措置になりうるかという問題である。現在、サイバー活動が武力紛争法の文脈において相互主義上の問題を包含していることを示唆する研究論文をまとめている最中であり、平成28年度中の投稿及び公表を目指す。なお、学会での報告に先立ち、国際法研究会において予備報告を行い、他の研究者の指導を受ける等、研究の精緻化に努めた。 学会報告後は、上記サイバー活動に関する論文の執筆と並行して、当初予定していた相互主義の基礎研究に着手した。基礎研究については、目下のところ国内外での資料・情報収集、及び先行研究や判例の分析が中心であり、論文執筆にまでは至っていないが、次年度のできるだけ早い時期に論点の抽出を終え、論文の執筆に取り掛かりたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、武力紛争法における相互主義の基礎理論に関する研究を終え、その研究論文を公表する予定であった。しかし、学会での報告準備に追われたことから、当初の計画を遂行することが困難となった。とはいえ、サイバー活動を素材として武力紛争法における相互主義の問題点を論じるという発想に至ったことは思いがけない収穫であり、実際上の要請からも研究に値する論点だと思われる。従って、結果的に研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度中に完了させることのできなかった論点(相互主義の基礎理論、及びサイバー活動と相互主義の問題)は、平成28年度の早い時期に分析を終える。その後、平成28年度に予定している研究(国際法の他の分野における相互主義の問題)に速やかに着手し、引き続き、研究成果を学術雑誌で公表し、及び学会で報告するように努める。また、論文の執筆と並行して、必要な資料及び情報を国内外で収集する。
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Research Products
(2 results)