2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J07141
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡村 太郎 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ヒューム / 自己知 / 抽象観念 / 情念 / 志向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、ヒュームの自己知論の基礎をなす知覚論、特に抽象理論について検討を加えた。近年、ヒュームの抽象理論は深刻な不整合を孕んでいるとの研究が発表されたが、未だこれに対する十分な応答は成されていない。しかしこれに応答することなしには、ヒュームの体系全体および自己知論を有力なものとして提示することはできない。そこで、この問題点に対しての解決策を見いだせないかを検討した。その結果、そうした問題点はヒュームの類似性についての誤った考えに基づいていることが判明した。具体的に言えば、これまでの解釈は類似性を類似点に基づいて理解する「類似点先行説」を採っており、それによって問題は生じている。代替案として、私は「類似関係先行説」を提示し、これを採用すれば問題は起こらないことを論じた。この成果は国際学会で発表されることが決定している。 これに加え、自己知と関連の深いヒュームの情念論に検討を加えた。自己への志向性をもつ情念が、自己についての知識をわれわれが得る際に重要な役割を有しているように見えるからである。そこで、その情念の役割が具体的にどのようなものなのかについて検討を加えた。これまでは、情念の志向性は志向的対象と情念との因果関係によって理解されるとする「外在説」が主流であった。しかしヒュームの情念論の体系によれば、志向性は、情念が他との関係に依らずに内在的に有しているものである。さらにこうして理解された情念の機能についても検討を加えた。情念はその内在的志向性によって、われわれの注意の方向を決定するという機能をもつのである。こうした情念の志向性についての「内在説」が提示され、その成果は学会と学術雑誌にて公表された。 また今年度はカナダ・トロント大学で在外研究を行った。以上の成果の一部は、トロント大学のDonald Ainslie教授とのディスカッションに基づいている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒュームの自己知論に密接に関わる抽象理論、情念論について検討し、それぞれ学会発表と学術雑誌という形で成果を出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はヒュームの説が競合する自己知理論の中でどのような位置をもつか、という本研究のもう一つの課題について成果を公表することはできなかった。今後は当初の計画に基づき、この点に重点的に取り組んでいきたい。
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Research Products
(3 results)