2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J07188
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
大橋 知佳 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 有機半導体 / ドーピング / 太陽電池 / ホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は極微量ドーピング技術を導入することで、高効率有機薄膜太陽電池の開発を目的にしている。採択1年目の前半は当初の計画通り、有機半導体に対してppmレベルのドーピング技術を確立した。回転板シャッターを積極的に用いることで、ドーピング濃度の精度を従来の%オーダーよりも格段に改善できた。次に本手法を駆使しながら、有機薄膜太陽電池を作製した。この時、有機半導体にはセキシチオフェンとフラーレンから成る典型的な共蒸着膜を、ドーパントにはドナーとして炭酸セシウム、アクセプターとして塩化鉄を用いた。太陽電池において重要な光電流発生層にppmレベルのドーピングを行った結果、高効率化に成功し、動作機構とドーピング効果を明らかに出来た。100 ppmでの性能向上は、ケルビン振動容量法を用いたバンドマッピングから、多数キャリアによるセル抵抗の減少と内蔵電界の増大に起因していることが分かった。一方、1,000ppmでの性能低下は、移動度測定から、ドーパントによるホッピング伝導の妨害が起因していることを明らかにした。 また採択1年目の後半からは、ppmレベルドーピングした有機単結晶のホール効果測定に挑戦した。有機単結晶にはルブレンを、ドーパントにはアクセプターとして塩化鉄を用い、ホモエピ層を導入することで有機単結晶へのドーピングを世界で初めて実現した。さらに磁場変調に同期した、ホール起電圧(VH)が観測でき、磁場の反転に対してVHの符号が変わることから、ホール効果であることを確認した。ホモエピ層のみが観測にかかるため、ドーピング濃度に対してキャリア濃度(cm-3)、ホール移動度(cm2V-1s-1)を正確に決定できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
採択1年目の平成27年度は、まず始めに有機薄膜太陽電池の光起電力特性に対するドーピング効果を、これまで前例が無かった1 ppmの極低濃度までを系統的に測定した。多数キャリア導入、内蔵電界形成によるメカニズムを提出し、高効率化することに成功した。また第1著者として論文を執筆し、国際学術誌に掲載できた。 [C. Ohashi, et al., Org. Electron., 27, 151 (2015).] 次に有機単結晶へのドーピングに挑戦し、ホール効果によってキャリア濃度、ホール移動度を世界で初めて実測できた。現在、論文を執筆している状況である。 これらの結果は、有機半導体に対するドーピング技術が実用的なレベルに達していることを示しており、基礎研究としても大きな意味を持つ。以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
採択2年目の平成28年度は、ppmレベルの極微量ドーピング技術を有機単結晶太陽電池に適用し、セル動作機構とドーピング効果を明らかにする。このオリジナルなセルでは、単結晶由来の超高速移動度を利用するため、非常に長い電極間距離(数十μm)が活性層になり、高効率化が十分に期待できる。
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Research Products
(4 results)