2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J07224
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢野 孝明 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ベンゾシクロブテノン / 光環化 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的にベンゾシクロブテノンは酸塩化物の真空熱分解や等量の有機リチウム種による分子内環化、強塩基により発生させたベンザインとケテンアセタールとの[2+2]付加環化反応などを経て合成される。しかし、これらの合成法は官能基許容性に乏しく、多様なベンゾシクロブテノンを合成することはできなかった。今回、報告者は独自に開発したオルトアルキルベンゾイルホスホン酸エステルの光環化反応を鍵とする官能基許容性の高いベンゾシクロブテノン合成法を開発した。 これまでに報告者は、オルトアルキルベンゾイルホスホン酸フェニルエステルに紫外光を照射すると環化してベンゾシクロブテノールが得られ、続いてリン酸カリウムを作用させると亜リン酸エステルが脱離しベンゾシクロブテノンが得られることを見出していた。しかし、このオルトアルキルベンゾイルホスホン酸フェニルエステルは不安定であり、多様な誘導体に適用することはできなかった。今回、フェニルエステルを嵩高い環状エステルに変えることにより安定性を劇的に改善することができた。リン周りが嵩高くなっているためにカルボニル基への付加が阻害されたためだと考えられる。この嵩高い環状エステルを用いることでメトキシ基、トリフルオロメチル基、ブロモ基、エステル基、カルバメート基、アルケニル基、アルキニル基などの様々な置換基を有するベンゾシクロブテノンを位置選択的に合成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、以前に見出したオルトアルキルベンゾイルホスホン酸エステルの光環化反応を鍵段階として、酸塩化物からベンゾシクロブテノンを一段階で合成する、亜リン酸ジエステル触媒による光環化反応を開発する計画であった。しかし、検討の結果、触媒的な条件のもとでは酸塩化物の分解が起こり、触媒反応の実現は困難であることがわかってきた。一方、検討の途中で、安価に市販されているジオールから調整できる嵩高い亜リン酸ジエステルを用いると、酸塩化物からベンゾシクロブテノンを、三段階ではあるものの簡便かつ高収率で合成できることを見出した。この方法では可視光を利用できる上、用いる亜リン酸ジエステルは反応終了後に回収でき、再利用できる。さらに、従来は困難であった官能基を有する多様な誘導体も合成でき、汎用性の高い実用的なベンゾシクロブテノン合成法である。このように、当初期待した触媒的ベンゾシクロブテノン合成は実現できていないが、ターゲットであるベンゾシクロブテノンを合成する優れた手法を開発できたことから「②おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
ベンゾシクロブテノンのアルファ位炭素に一つ置換基を導入するとキラルになるが、その不斉合成は知られていない。本年度は、昨年度に得られた知見を基盤としてキラルな亜リン酸ジエステルを用いたアルファ位置換ベンゾシクロブテノンのエナンチオ選択的合成に挑戦する。市販されている、もしくは合成法の確立されているキラルジオールや、それらを修飾した誘導体からキラルな亜リン酸ジエステルを合成し、オルトアルキル安息香酸塩化物からの三段階での不斉合成を試みる。また、新たに合成した亜リン酸ジエステルを触媒として用いて、一段階での触媒的な合成にも引き続き挑戦する予定である。
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Research Products
(2 results)