2015 Fiscal Year Annual Research Report
高度液晶光配向技術を用いた三次元異方性フォトニック光学素子の形成
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15J07254
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
河合 孝太郎 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 回折光学素子 / 液晶回折格子 / 液晶材料 / 機能性高分子材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、光波伝搬の高度制御が可能な異方性回折光学素子の創成、さらには異方性フォトニック構造形成への展開を目指し、2枚の光架橋性高分子液晶(P6CB)基板から成る液晶充填前の空セルに対して、3光束偏光干渉光を一度露光することによる液晶回折格子の形成を試みた。 本研究で使用したP6CBは、光配向時の露光エネルギーに応じて、照射直線偏光に対して直交または平行方向に配向させることができる。この特性を利用する事で、2枚のP6CB基板により形成した空セルに対して、偏光干渉紫外光を一度露光するのみで、2枚の配向膜で互いに平行または直交した配向処理を施すことが可能となる。 本研究における3光束以上を干渉させた多光束干渉では、干渉光の強度及び偏光状態を2次元的に変調させることが可能である。よって、P6CB基板に対する2次元パターンの配向処理が容易であり、さらに前述した2枚同時の光配向手法と組み合わせることにより、3次元的に光学異方性が変調された回折光学素子の効率的な形成が可能となる。実際に形成した3次元液晶配向構造は、90°TN配向と0°Planar配向が、ある一つの格子ベクトル方向に周期的に形成され、それと垂直方向には、0°Planar配向の配向方向が連続的に変調された構造である。本素子に対して可視光レーザーを入射した際は、2次元回折光が生じ、入射光の偏光状態に依存して回折特性が変化し、さらには回折位置に応じて異なる偏光変換が成された。直線偏光入射時は、回折位置に応じた偏光方位角の変換が成され、円偏光入射時は、直線偏光及び入射光に対して逆回りの円偏光の両者が回折した。これら一連の偏光回折特性は、Jones法による理論解析結果と良く一致した。これらの結果は、本素子が一度に多数の偏光状態の光波を生成することが可能で、それらの偏光状態は、入射光の偏光状態によって制御可能であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、液晶光配向技術を用いた三次元異方性回折光学素子の形成といった最終目標につながる、3光束偏光干渉露光による液晶回折格子の形成に関しては、当初の計画通りに進行した。2枚の光架橋性高分子液晶基板から成る液晶充填前の空セルに対して、3光束偏光干渉紫外光を一度露光する手法で3次元液晶配向構造を形成できることを実験によって実証できた。さらに、配向分布の観察結果や本素子の偏光回折特性の測定結果は、Jones法を用いた理論解析によって説明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施した3光束偏光干渉露光法を用いた液晶回折格子の形成により得た知見を基に、今後は、光源にHe-Cdレーザー(波長325 nm)を用いた4光束偏光紫外干渉光学系の構築を行った後、2枚の光架橋性高分子液晶基板により形成した空セルへの4光束偏光干渉紫外光の一度露光により、液晶回折格子(可変波長・偏光ビームスプリッター)を形成する。本素子では、入射光の波長によって回折する方向(回折オーダー)が異なり、それらは温度制御によって回折方向を入れ替えることができる。また、入射偏光を直交した2つの偏光成分に分離して複数回折させる。これらの素子の配向分布設計、4光束偏光干渉による形成手法の詳細、及び事前の回折特性の理論解析はすでに完了している。形成した素子に対しては、偏光顕微鏡を用いた配向分布の観察を行う。また、各種偏光状態の波長488, 532, 633 nmのレーザーを入射し、温度コントローラ―による素子の温度制御を行うことで、上記の特性が得られることを実際の実験において確認する。この素子の他にも、4光束干渉光学系を用いた魅力的な回折特性を有する液晶回折格子の形成等を行っていく。 得られた研究成果は、初年度と同様に、American Institute of PhysicsまたはOptical Society of America が出版している査読付き学術論文誌に投稿・公表する。また、SPIE等の国際学会及び応用物理学会、Optics Photonics Japan等の国内学会に参加し、成果の発表を行う。
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Research Products
(7 results)