2015 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算の回帰に基づいた原子間ポテンシャルによるHCP金属塑性変形機構の解析
Project/Area Number |
15J07315
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 亮 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 原子間ポテンシャル / 機械学習 / マテリアルズインフォマティクス / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子動力学法やモンテカルロ法等の統計熱力学シミュレーションは,材料工学に幅広く用いられており,近年では塑性変形機構の解析にも新たな展開をもたらすものと期待されている.こうしたシミュレーションでは,系のエネルギーを評価する際に,主に第一原理計算法と原子間ポテンシャル法の2種類が使われている.しかし,第一原理計算は計算コストの観点から未だ転位等の格子欠陥を含む大規模系への適用が困難であり,原子間ポテンシャル法は高速であるもののパラメータの調整が難しく,精度に疑問が残るという問題点がある. 近年,第一原理計算と統計的手法に基づいた高速かつ高精度な原子間ポテンシャルの構築手法が開発されている.本研究では,この手法に基づき,MgやTi等のHCP金属について上記のような原子間ポテンシャルを構築し,塑性変形機構について定量的な知見を得ることを目指す.HCP金属は,FCCやBCC金属に比べて塑性変形機構に不明点が多い. 当該年度はMgにおいてニューラルネットワークポテンシャル(NNP)によって原子間ポテンシャルを構築する予定であったが,研究途中でポテンシャル構築の枠組みの改善の必要があると考え,以下のように改良した. まず,NNPではなく,当研究室で提案された線形回帰ポテンシャルを用いることとした.この枠組みは,回帰にかかる計算コストが非常に小さく取り扱いやすい. もう一点は,原子間ポテンシャル関数の表式を多体相互作用を効率的に表現するように改良し,エネルギー予測の精度と計算速度を向上させた.これは特別研究員自身のアイデアに基づいている. この枠組みを用いて,MgやTiを含む非磁性の31種類の元素について原子間ポテンシャルを構築したところ,殆どの元素で既存の枠組みに比べてエネルギー計算の精度と速度が大幅に向上した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究において,当初はMgにおいてNNPによって原子間ポテンシャルを構築する予定であったが,研究途中で原子間ポテンシャル構築の枠組みを改善する必要があると考え,独自に新しいポテンシャル構築の枠組みを提案した. この枠組みは当研究室で提案された線形回帰ポテンシャルを基にしており,取扱が簡便である.また,特別研究員独自のアイデアに基づき,ポテンシャル構築に用いる記述子を改善することにより,エネルギー計算の精度と速度の両面で従来より優れたポテンシャルを構築する枠組みを開発した. 開発した新しい手法に基づいて,31種類に及ぶ多様な元素についてポテンシャルを構築した.この新しい枠組みで構築したポテンシャルは,殆どの元素種において従来のものに比べて精度と速度が大幅に向上していることを確認した.その成果は,既存のポテンシャル構築の枠組みを用いて,個々の系でそれぞれパラメータを最適化して原子間ポテンシャルを構築していくという当初の計画を大きく超えるものと考えている.この研究成果については,学会発表を精力的に行っており,さらに現在その成果について論文を作成中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度において提案したポテンシャル構築の枠組みを用い,MgやTi等のHCP金属について精度の高い原子間ポテンシャルを構築し,転位等の格子欠陥の安定性や動的過程を評価するシミュレーションを行う. また,合金系のポテンシャルの構築の枠組みも提案しており,二元系のポテンシャル構築やシミュレーションについても平行して進めていく.
|
Research Products
(6 results)