2015 Fiscal Year Annual Research Report
がん抑制因子Beclin 1の新規リン酸化サイトの役割の解明
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15J07366
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤原 信行 山口大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | Beclin 1 / PP2A / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
真に有効な抗がん剤の開発は、ヒト医療と獣医療の双方にとって重要な課題である。がんではリン酸化酵素キナーゼの異常な活性化とともに、脱リン酸化酵素ホスファターゼの活性抑制が観察され、「ホスファターゼ活性の回復」は新たな創薬標的として期待されるが、ホスファターゼ活性の低下によるがんの悪性化の詳細な分子機構は明らかになっていない。オートファジーは異常タンパク質や不良ミトコンドリアなどを分解することで細胞の恒常性維持に働き、がんの抑制に重要な働きを果たしている。オートファジー誘導に必須の因子であるBeclin1は、ヒトの様々ながんにおいて高率に変異や欠損が認められることや、ヘテロノックアウトマウスでがんの自然発生率が増加することなどから、がん抑制因子であると考えられている。したがって、Beclin1の機能がどのように制御されているかを理解することは、発がんメカニズムの解明およびこれを標的とした治療戦略の創出につながるが、その分子機構についてはほとんど明らかになっていない。 本研究は、Beclin1の機能がどのように制御されているかを申請者が同定したBeclin1の新規リン酸化サイトSer90に着目し、Ser90リン酸化の生理的な機能やSer90をリン酸化するキナーゼを同定することを目的とした。 本年度は、Beclin1 Ser90がマウス生体や培養細胞において飢餓時にリン酸化されることを見出し、Beclin1 Ser90をリン酸化するキナーゼをキナーゼの阻害剤やin vitroのキナーゼアッセイを行い同定した。さらにBeclin1の変異体を用いた検討からSer90のリン酸化がオートファジーを誘導することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、項目A「Beclin1 Ser90リン酸化の生理的な役割の解明」と項目B「がんの成長・転移におけるBeclin1 Ser90リン酸化の役割の解明」の2項目を研究項目として立てた。項目Aについてはすべて達成し、Beclin1 Ser90をリン酸化するメカニズムに関連する論文を1報投稿し採択された。また、次年度の研究計画に記載した事項についても研究を開始している。項目Bについては、項目Aを優先した結果、Beclin1の野生型及びSer90変異体発現がん細胞の作成を行ったところであり、当初の予定より若干遅れる結果となっているが、全体を通しておおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
若干の遅れがみられるがんの成長・転移におけるBeclin1 Ser90リン酸化の役割の解明については、すでに変異体を発現させた細胞を作成済みであり、今後は各種の解析を進め当初研究計画に追い付きたい。また、項目Aを進めていく中で、Protein phosphatase 6 (PP6) がBeclin 1の複合体構成を制御し、オートファジーを調節しているという新しい知見が得られたので、今後は並行してPP6によるBeclin 1の制御機構の解明について検討を行っていきたい。
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Research Products
(4 results)