2015 Fiscal Year Annual Research Report
1分子から心臓への階層縦断的計測を用いて高速自励振動の心拍への役割を解明する
Project/Area Number |
15J07373
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新谷 正嶺 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 生物運動系階層構造・機能 / 生体分子モーター / 心筋細胞 / 生物リズム / 心臓拍動 / 化学力学フィードバック / 生物物理 / 細胞熱力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新たに発見した心筋細胞の高速筋節振動がどのような分子メカニズムで実現し、心拍やその破綻とどう関わるのかを明らかにすることである。 昇温操作の出来る実験系をパーツから自作し、心筋細胞内の筋収縮系の筋節(収縮ユニット)の計測精度に関しても、高速筋節振動計測時の画像取得レートを33frames/secから500frames/secに大幅に上げながらも筋節長の位置精度を5 nm (25 frames/secなら1 nm)とできるように装置を改良した。筋節長はα-actinin-GFPを発現させたZ線の輝度中心推定によって計測した。この実験系で高速筋節振動を計測すると、約1Hzの自発的なカルシウム変動に伴う筋節の収縮に応じて、同じ筋節が同時に行う約8Hzの高速筋節振動は、その振動振幅を約6倍も変調させていること、それにもかかわらずその高速振動の振動数は一定に保たれていることが明らかとなった。モーター分子の化学力学反応シミュレーションでその挙動の再現を試みることにより、振動を生み出し特徴付ける分子の挙動が理解できるようになった。すなわち、ナノメートルスケールの分子振動とマイクロメートルスケールの筋節振動を関係付けることに成功した。低侵襲化を進めているラット心臓表面の計測においてCa wave依存と考えると説明がつかないメカニカルオシレーションを捉えることに成功しており、この話も含めると、ナノメートルスケールの分子振動からミリメートルスケールの心臓までを「振動」という切り口で繋ぐ道筋を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレーションも数値実験と考えるのであれば、1年目で1分子から筋節、心臓までの各階層での振動現象を捉え、筋節の高速振動現象という切り口で階層縦断的考察を行えるように出来たことは良い進捗状況であると分析する。しかし、筋節内1分子挙動の実計測と、心臓と細胞のそれぞれの実験系で捉えた振動現象の関連性の明確な提示は未だ十分に出来ていない。この2点の解決は実験手法の開発という研究進展を促す目標でもある。現在の研究ペース配分がこの2点の解決のために十分であったかは1年目の現時点では未だ判断できないので、「(2) おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
シミュレーション結果という仮説を得たことで、筋節内部の分子動態の実験計測を試みた際、nm精度の筋節長だけでなく、分子の時系列変化や瞬間の状態分布から計測の成否を判定できるようになった。このことを武器に、実計測での高速振動時の筋節内分子挙動の可視化を目指す。また、心臓計測の実験系は、現時点では低侵襲とは言い難い。実験系の低侵襲化を目指していく。
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Research Products
(9 results)