2015 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的第一原理分子動力学計算に基づいたLiイオン拡散係数予測モデルの構築
Project/Area Number |
15J07421
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
炭谷 晃史 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | イオン伝導体 / 固体電解質 / 分子動力学法 / データマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
Liイオン電池の全固体化に向け無機固体Liイオン伝導体に対する注目は年々高まっている.酸化物系のLiイオン伝導体は硫化物系と比べ安全性の面などで優れている.一方でイオン伝導度は劣っており,イオン伝導性の向上が望まれている.既存の研究においては特定の構造を有するLi複合酸化物のLiイオン伝導度予測モデルを構築し,新規Liイオン伝導体となりうるLi複合酸化物を提案がされているが,本研究では化合物の範囲を拡大し多様な結晶構造を有するLi複合酸化物を対象とすることを目指す.当該年度はLiイオン伝導度予測モデルの構築を目指した. 無機結晶構造データベースICSD収録構造の内,LiとOの両方を含む3元または4元系化合物合計797種について,GULP codeを使用し,温度1600 Kにおいて分子動力学計算を行いリチウムの拡散係数を求めた.分子動力学シミュレーションの結果,高いリチウムイオン拡散係数を示した物質にはLi0.62La1.12TiO3 (LLTO型) や Li7La3Zr2O12(ガーネット型)などの既知のリチウムイオン伝導体が含まれていた.なお,リチウム以外の原子の拡散が確認された物質は以後の解析から除外した.さまざまな説明変数の組み合わせで拡散係数の対数を回帰することを検討した結果,密度や組成に関する変数に加え部分動径分布関数の情報を追加することで,拡散係数を予測可能なモデルを構築することができた.学習データ以外のデータに対する予測能力を評価するため,全データのうち75% を学習データとし予測モデルを構築した.学習データ以外の残り25% のテストデータに対する平均二乗誤差は拡散係数の対数に対して0.33となった.この結果は今回用いた予測モデル構築手法はデータベース外の物質に対する予測モデル構築に対して有効であることを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,化合物の範囲を拡大し多様な結晶構造を有するLi複合酸化物を対象にしLiイオン伝導度予測モデルの構築を目指した.今年度の結果として学習に使用していない物質に対しても拡散係数を予測可能なモデルを構築できた.研究は順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により多様な結晶構造を有するLi複合酸化物を対象にしLiイオン伝導度予測モデルの構築することができた.今後は第一原理計算により合成報告のない物質に対して構造最適化を行った結果をもとに,これまでに構築したモデルを活用し高い拡散係数を示す物質のスクリーニングを行うことで新規材料の発見を目指す. これまでに得られた結果を総括し,雑誌論文や国内外での学会において発表する.
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Research Products
(1 results)