2015 Fiscal Year Annual Research Report
親水性物質の水和機構の解明―これまでにない広帯域分光法による統一的解釈―
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15J07440
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐川 直也 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 水和 / 親水基 / 誘電緩和 / 近赤外 / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,主に近赤外吸収スペクトル測定,マイクロ波域誘電緩和測定とテラヘルツ域誘電緩和測定の結果に基づき親水基の水和挙動を議論した。また,動的光散乱(DLS)法を用いて水和挙動と非常に関連性のある水溶液の粘弾性挙動を評価した。これらの結果について,論文発表と国内,国外合わせて6件の学会発表を行った。 非プロトン性親水基である,ニトロ基またはシアノ基を有するアルキル鎖長の異なる化合物の水溶液について近赤外吸収スペクトル測定を行い,その結果について論文発表を行った。ニトロ基やシアノ基の存在によって水分子のOH伸縮振動の高波数側の吸収が増加していることが明らかとなった。この高波数のOH伸縮振動は,ニトロ,シアノ基と水素結合を形成していない自由な水分子の振動(ダングリング水酸基)であると結論付けられた。(J. Phys. Chem. B,119,8087-8095,2015)また,このダングリング水酸基を有する水分子の存在はテラヘルツ域誘電緩和測定からも確認されている。 代表的な親水基の一つである第三級アミノ基を有する化合物の水溶液中での水和挙動と構造を誘電緩和測定の結果から議論し,その内容について学会発表を行った。 第三級アミンの一つであるトリエチルアミン(TEA)の希薄水溶液の誘電スペクトルから,自由水の回転緩和,第二水和水と第一水和水の交換過程,第二水和水と自由水の交換過程が観測された。水和数は温度上昇に伴い減少し明瞭な脱水和挙動が観測された。アルキル鎖長の異なる第三級アミンでも同様の脱水和挙動が観測された。TEA濃厚水溶液の誘電スペクトルの低周波数域に希薄水溶液では観測されなかった新たな緩和が観測された。この新たな緩和は,TEA分子に水分子が水和することによって形成される大きな構造体に由来し,温度上昇とともに成長することにより相分離すると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非プロトン性親水基であるニトロおよびシアノ基の水和挙動について,マイクロ波域誘電緩和,テラヘルツ域誘電緩和,近赤外吸収スペクトル測定の三つの測定からの結果を統合して解釈することが可能であった。この結果を踏まえて,他の親水基の水和挙動についてもこれら三つの測定結果を合わせて解釈できる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
評価を行っていない親水基の水和挙動についてマイクロ波域誘電緩和,テラヘルツ域誘電緩和,近赤外吸収スペクトル測定の結果から考察を行い,三つの測定結果の関連性について深く検討する。また,動力学シミュレーションを行い実験結果を再現する水和構造を決定する。
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Research Products
(8 results)