2016 Fiscal Year Annual Research Report
親水性物質の水和機構の解明―これまでにない広帯域分光法による統一的解釈―
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15J07440
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐川 直也 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 水和 / 親水基 / 分子ダイナミックス / 誘電緩和法 / 近赤外分光法 / テラヘルツ分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、いくつかの極性物質においてテラヘルツ域の誘電スペクトル測定を行い、現行の装置の性能を検証するとともに、得られた結果から分子ダイナミックスを議論した。また水溶液のテラヘルツ域までの誘電緩和測定の結果に基づき親水基の水和挙動について議論し、その結果と近赤外吸収スペクトル測定で得られた結果の比較を行った。さらに、動的光散乱法を用いて水溶液の粘弾性スペクトルを得てその結果から水溶液中での溶質の溶存形態を議論した。 現行の装置で得られる室温における純水の誘電スペクトルは、これまでに報告されている8psと0.2ps付近の緩和に加えて共鳴周波数が6.8THzの共鳴型吸収を仮定すると精度よく実験結果を説明できた。水和挙動の議論では、主に溶質の存在が8psと0.2psの緩和モードに与える影響に注目した。 異なる水和数を示すいくつかの親水性物質の水溶液についてテラヘルツ域(~4THz)までの誘電スペクトル測定を行った。ニトロおよびシアノ化合物はその濃度増加によって水溶液中の0.2ps付近に緩和を有するダングリング水の分率を増加させることがわかった。この結果は、近赤外吸収スペクトル測定で得られた水素結合を形成していない水分子の分率が増加する傾向と一致している。 一方、エーテル基を有するpoly ethylene oxideの水溶液についても同様にテラヘルツ域までの誘電スペクトル測定を行った。ニトロおよびシアノ化合物とは異なり溶質濃度増加に伴いダングリング水が減少していることがわかった。この傾向もまた近赤外吸収スペクトル測定で得られた結果と同一である。 詳細な解析は次年度に行うがテラヘルツ域の水和挙動と近赤外吸収スペクトル測定から得られた結果に対応関係があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニトロ基、シアノ基、エーテル基を有する化合物についてテラヘルツ域誘電スペクトル測定法の結果から議論した水和挙動と近赤外吸収スペクトル測定から得られた結果に対応関係があることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
他の親水基についてもテラヘルツ域誘電スペクトル測定を行う。また、テラヘルツ域誘電スペクトル測定法から得られた結果の定量的な議論を進める。さらに、動力学計算を行い実験結果から得られる水和挙動についてより詳細に議論する。
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Research Products
(11 results)