2015 Fiscal Year Annual Research Report
軽元素スピントロニクス材料におけるX線磁気円二色性の解明
Project/Area Number |
15J07459
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小出 明広 千葉大学, 融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | X線磁気円二色性 / 軽元素 / 多重散乱理論 / X線吸収分光 / スピン軌道相互作用 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、軽元素スピントロニクス材料におけるK吸収端X線磁気円二色性(K-edge XMCD)の起源を解明し、XMCDを更なる材料開発に活かすことを目的とした。XMCDを得るためにはスピン軌道相互作用(SOI)が必要であるが、軽元素ではSOIが弱いため、そのXMCDの起源は十分理解されていなかった。近年、グラフェンやh-BNを用いたスピントロニクス材料の研究が精力的に行われており、局所的な磁気的情報を得られるXMCDの軽元素への応用は重要である。
K-edge XMCDスペクトルの計算に対して有効である多重散乱理論は、これまで吸収原子のSOIのみを考慮して来た。本研究では軽元素への応用から周囲原子のSOIを取り入れた理論に拡張し、直接相対論的に理論を扱うよりも従来の理論との比較が容易な形で定式化することに成功した。更に、基底状態の電子状態を第一原理計算によって求めたものを使用することで、計算精度を向上させた。試験計算として、BCC FeのK-edge XMCDスペクトルを計算したところ、周囲原子のSOIは無視できない結果が得られた。軽元素スピントロニクス材料として注目されているグラフェン/Ni(111)(G/Ni)に対し、C K-edge XMCDスペクトルを計算したところ、ほぼ完全にNiサイトのSOIのみがXMCDに寄与していることがわかった。また複数の構造のG/Niに対して計算を行うことにより、3つのNiに囲まれた特定の炭素原子の吸収によってXMCDが得られることが明らかになった。これは炭素とNiとの結合の様子がXMCDから解析出来ることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
K-edge XMCDにおける周囲原子のSOIの重要性を明らかにし、またG/NiにおけるC K-edge XMCDスペクトルの理解が進んだため、順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
表面や空格子点といった、隙間の大きい系に対する多重散乱計算の精度を向上させる。空格子点については第一原理計算の利用の際に実装した、空の原子球サイトを利用することで計算が可能である。表面についても同様に空の原子球を適切に置くことで計算が行えるが、設置位置の任意性が残る。全ての原子サイトのポテンシャル構造を厳密に扱うFPMS法では、表面領域を空のセルで敷き詰めることで表面ポテンシャルをより正確に考慮することが出来る。しかし、固体内では従来の球状ポテンシャルの近似で十分な場合も多いため、両者を複合した手法に挑戦する。これにより、空の原子球サイトを用いて計算していたG/Niに対する計算精度向上を狙い、より詳細な解析が可能か検討する。
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Research Products
(6 results)