2015 Fiscal Year Annual Research Report
「基礎づけ」概念に基づく形而上学的方法論の正当化と、その科学哲学・倫理学への応用
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15J07514
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 直彰 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 現代形而上学 / 分析形而上学 / 科学哲学 / 哲学方法論 / 新アリストテレス主義 / 自然主義 / 基礎づけ / アプリオリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の上半期は、本研究全体の土台を形成する考察(博士課程在学中から続く研究)の集大成として、基礎づけ(grounding)の形而上学に関する博士学位論文を完成させた。本年度の下半期は、本研究を構成する個々の課題のうち、〈自然主義からのアリストテレス的現代形而上学批判に応答する〉という基礎研究課題を遂行するための研究に従事した。具体的には、まず、自然主義および自然主義的形而上学に関する近年の論文集や著作を参照し、 現在の論争状況をサーヴェイするとともに、自然主義からのアリストテレス的現代形而上学批判の骨子を確認した。そのうえで、自然科学の探究におけるアプリオリな方法の役割を検討する作業に移行した。この作業により、予測や実験といった典型的な科学的手法から逸脱する側面を含むと考えうるような理論形成過程においてどのようにアプリオリな探究が不可欠の方法となっているかを、本研究に必要な範囲で確認することができた。この成果は、経験的な方法を単純に科学の方法と重ね合わせるような素朴な自然主義に潜む困難を具体的に示すことに寄与するものである。また、上記の作業と並行して、科学と形而上学の連続性を強調する方向性(T. Williamsonなど)と、形而上学に固有の主題と役割を与える方向性(E. J. Loweなど)とを比較・検討し、両者のあいだの本質的な対立点を浮き彫りにする作業にもとりかかった。この作業は、アリストテレス的現代形而上学の方法論を積極的に擁護するための予備的考察を構成するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自然科学の探究におけるアプリオリな方法の役割を検討する過程で、課題遂行に必要な科学的知識の不足を補う必要が生じ、その修得に近づくための作業に予想よりも多くの時間が費やされたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の進捗状況をふまえ、今後の年次計画に以下の修正を加える。平成28年度に取り組む予定であった〈存在的構造実在論の適切な定式化と擁護可能性を検討する〉という応用研究課題を、平成29年度の達成目標に変更する。平成28年度は、〈自然主義からのアリストテレス的現代形而上学批判に応答する〉という基礎研究課題への取り組みを継続することに加えて、存在的構造実在論に関する考察において鍵となる基礎物理学の知見を修得するための理論的・技術的訓練を積むこととする。この変更により、他の二つの応用研究課題、すなわち〈規範的・価値的性質に関する説明を「基礎づけ」によって理解する〉〈規範的・価値的性質の還元可能性と依存性をめぐる問題を解決する〉という課題に関してもその達成目標となる時期を遅らせざるをえないことになるが、これらの課題ための予備的考察は、平成28年度中に上記の基礎的訓練と並行して実行することを目指す。
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Research Products
(3 results)