2016 Fiscal Year Annual Research Report
高分散・高時間分解能X線観測を用いたブラックホール近傍での降着・放出現象の理解
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15J07567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水本 岬希 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
系外ブラックホールNGC4051に対して、ヨーロッパのXMM-Newton衛星のアーカイブデータを用い、高いエネルギー分解能でX線スペクトル変動を調べた。この天体の周囲には「暖かい吸収体」と呼ばれる光電離したガス雲があり、スペクトルからそのような「暖かい吸収体」が3つあることがわかっていたが、時間変動の観点から調べたところ、3つのうち1つのみが変動を示し、のこりの2つは変動を示さないことがわかった。また、変動を示す「暖かい吸収体」と、電離していない「冷たい吸収体」の変動の間に相関があることを見つけた。これは、変動を示す「暖かい吸収体」と「冷たい吸収体」が物理的に同じところにあることを示しており、吸収体が2層構造になって、核部分が冷たく、外層部分が暖かくなっていると解釈することができる。また、変動を示さない「暖かい吸収体」は、物理パラメータなどから視線上に広がる「ライン駆動型アウトフロー」と解釈できることがわかった。本研究は、一見同じように見える「暖かい吸収体」が2つの異なる物理機構で発生していることを示すもので、系外ブラックホール付近の質量放出現象に新たな知見を加えるものであった。また、2層構造の吸収体という考え方は、筆者がこれまでの研究でも提案してきたことであるが、本研究によりさらに確かなものとなった。これらの結果は査読論文として発表した他、国内学会、国際会議でも口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラックホール周辺の物質分布構造を調べるという当初の計画を着実に進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
ブラックホール付近での物質分布をさらに調べるために、観測されるX線の「時間遅れ」について理論シミュレーションを行う。ブラックホール付近から放射されたX線は、なにもなければそのまま望遠鏡に届くが、まわりに物質があり、その物質で反射されて望遠鏡に届くと、そのまま届く光より光路差の分だけ遅れて届く。逆に言えば、あるエネルギーバンドの光が他のエネルギーバンドより遅れて届けば、そのエネルギーバンドの光を反射する物質が放射源の周りにあるということがわかり、放射源から反射物質までの距離がわかる。 この「時間遅れ」を定量的に扱うために、モンテカルロ計算コードを用いて、放射源の周りにある反射物質の構造を変化させて観測にあうようにするにはどうすればよいかを計算する。特に、ブラックホールから数十重力半径に反射物質があるときにどのような時間遅れが観測されるかを調べる.
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Research Products
(8 results)