2015 Fiscal Year Annual Research Report
鉛ビスマス系新規超伝導薄膜によるトンネル型量子デバイスの作製
Project/Area Number |
15J07623
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小森 祥央 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 固有ジョセフソン接合 / 1212型酸化物高温超伝導体 / 超伝導異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本期間では、1212型高温超伝導体のc軸固有ジョセフソン接合(超伝導層/絶縁層/超伝導層からなるトンネル接合)を利用した高出力高周波のジョセフソンデバイス(テラヘルツ発振素子など)の作製を目指して、良質な接合が得られる条件の探索および固有ジョセフソン特性の詳細な評価を実施した。 1212型高温超伝導体に特有の絶縁層の元素多様性を利用することによって、絶縁層の構成元素が接合の電気特性に与える影響を系統的に評価した。これによって、主に鉛が絶縁層のリーク電流を大幅に低減する役割を果たすことが明らかになり、絶縁層に鉛を多くドープした試料においてはc軸方向に流れる超伝導電流の温度依存性は、理想的な超伝導層/絶縁層/超伝導層の特性と一致することが分かった。 理想的な固有ジョセフソン特性を示す薄膜が容易に得られるようになったため、超伝導電流や接合の散逸の組成依存性やキャリア密度依存性の詳細な評価を次に行った。固有ジョセフソン特性のキャリア密度依存性に関しては、キャリア密度の増加につれて臨界電流密度や接合の散逸が指数関数的に増大する傾向が観察され、他の高温超伝導体であるビスマス系の物質やイットリウム系の物質と類似した傾向を示すことが明らかになった。特異な点としては、絶縁層の鉛サイトを銅で部分置換していくことで超伝導電流や接合の散逸が系統的に増大していく現象が確認された。これは、銅置換によるc軸抵抗率の減少によるものであり、ビスマスの置換でも同様の傾向が見られた。c軸超伝導電流が大きい方が固有ジョセフソンデバイスの出力および周波数が向上するため、絶縁層の鉛と銅あるいは鉛とビスマスの組成で出力・周波数の制御が可能であることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
困難であると考えられていた、1212型物質における固有ジョセフソン接合の電流電圧特性の観察を再現性良く行うことができ、その詳細な特性の評価まで研究を進めることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
絶縁層を構成する元素と固有ジョセフソン特性の関係、特にデバイスの出力を決めるジョセフソン電流の大きさと絶縁層の構成元素の関係をより詳細に理解するための知見を得る。さらに実際に1212型の高温超伝導体でテラヘルツを発振させるための素子を作製し、ビスマス系の物質以外からの初めてのテラヘルツ発振の観測および、1212型物質の利点を生かした、より高出力・高周波の発振をできるデバイスの作製を試みる。
|
Research Products
(4 results)