2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J07641
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 純 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | グラフィカル計算 / 双対性 / コボルディズム |
Outline of Annual Research Achievements |
コボルディズムの相対版としての変種である配置コボルディズムを用いて、圏論的対象を記述する方法の研究をすすめた。特に、通常のコボルディズムの上に、部分多様体を埋め込まれたものを配置コボルディズムと定義し、これを用いることを考えた。前年度の結果を用いることで、配置コボルディズムの圏の代数的記述が得られるが、これによって、グラフィカル計算のトポロジカルな基盤が与えられると期待している。 このためには、第一に、配置コボルディズム上の各成分に、圏の上のオペレーションと対応するように、適切なラベル付けを与える必要がある。本年度の研究において、配置コボルディズムから、関手的に対合付き箙を構成する手法を開発したことによって、これは、対応する対合付き箙から底圏への箙の射として定式化することができるようになった。これによって、底群Oでラベル付けされた配置コボルディズムの圏から、対称モノイダル圏Vへの対称モノイダル関手を考えることができるが、これは、Vで豊穣化された、ある種の双対関手を持つモノイダル圏Cを決定していることがわかった。 逆に、対称モノイダル圏Vで豊穣化された、ある種の双対関手を持つモノイダル圏Cについて、その対象集合Oとして、Oでラベル付けされた配置コボルディズムの圏のある部分圏からVへの対称モノイダル関手が、本質的に圏Cの情報を持つこともわかった。このような圏Cの例としては、半単純リー代数の有限次元表現の圏や、有限群の有限次元表現の圏などがあり、これら表現論において最も基本的な圏の構造について、トポロジー的な表示を得る目処が立ったことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフィカル計算の、ホモトピー論的な側面、すなわち∞圏を用いた記述について、十分な結果が出たとは言えないが、通常の圏論の範疇では、ほぼトポロジーの観点からの記述まで辿り着くことができた。特に、グラフィカル計算においては、伝統的に数学的厳密性が欠けるような議論もいくつかあったが、このような曖昧な議論を排し、純粋にトポロジーの言葉で記述し、また種々の構成を関手的なものとして整備できたことは大きい。一般的に、トポロジー的な記述が得られれば、高次構造はその自然な帰結として得られるべきものであるので、これは十分満足できる結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られている代数構造に対して、そのコヒーレンスの問題、すなわち高次構造を求めたい。本研究は、位相的場の理論の類似の側面があるが、特に位相的場の理論の高次構造は、Baez-Dolanのコボルディズム仮説として、非常に豊かな先行研究がある。一方、その証明に用いられる、コボルディズムに対するいくつかの結果は、本研究における対象である配置コボルディズムには、そのまま適用が困難なものがある。この困難を解消するため、微分トポロジーの種々の結果を相対版のものに一般化し、統一的な理論を作り上げたい。さらに、それを配置コボルディズムに適用した時に現われる構造について、それをどのように高次圏の言葉に翻訳するかという問題もある。今後は、これら二つの課題を中心に取り組みたい。
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Research Products
(2 results)