2015 Fiscal Year Annual Research Report
防災・地域特性を考慮した都市全体のエネルギーシステム最適設計・運用手法の開発
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15J07668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 伸太郎 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 最適化手法 / 蓄電池 / 蓄熱槽 / 需要変動 / エネルギーシステム / 運用最適化 / 設計最適化 / ライフサイクルコスト最小化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は蓄電池や蓄熱槽、複数種熱源など多様なエネルギーソースを持つ複雑なシステムにおいて従来のようなシナリオベースの運用計画や線形化を施す簡易モデルの適用ではなく、複雑なシステムをそのまま最適化することでシステム全体が持つ本来のポテンシャルを最大限引き出すことができ、加えて外界条件の変化に柔軟に対応することが可能な汎用的で実際的な手法の開発を主目的としている。 その中で、本年度は異なる用途の複数建物を同時最適化する「用途及び規模の拡張」と、不測の需要変動やPV出力変動に柔軟に対応することが出来る最適化フレームワークの提案の2軸で研究を進めてきた。 前者では、オフィスとホテル及び地域の共有蓄電池・蓄熱槽という規模の拡張による最適化問題の複雑化に対する適切な最適化手法の提案を行なった。人工知能を応用することで一般的な数学的手法に必要とされる複雑な定式化作業を排除し、効率的にかつ高精度で最適化問題を解くことが可能となった。これにより地域エネルギー供給など広範囲のシステムを考慮するための基礎を固めた。 後者では、シミュレーションによってランダムに変動を発生させ、運用コストを最小化しつつその変動に追随する運用方法を計算する最適化フレームワークを新たに提案した。本フレームワークは多様な最適化手法と併用することができるため汎用性が高く、得られた解の最適性を維持したまま、計算コストを最大限抑制することが出来る。この成果により、実務において起こり得る不測の需要変動等に対して機動的に対応することができる。 加えて、次年度以降に予定していたエネルギーシステムの年間計算も実装している。年間月代表日を対象とし、1日ごとの運用計画を仮想的に切り分けて最適化することによって精度を落とさず高速に解くことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、査読ジャーナルへの採用・掲載が3件、国内・海外学会での発表が4件、受賞が1件であった。現時点では、査読ジャーナルへの投稿中が1件、国内・海外学会への投稿中(受理含む)が3件である。 本年度の当初の目標は、1) 建物のエネルギーシステムの最適化において異なる用途の建物の同時最適化と、2) 需要の不確実性への対応を挙げていた。1)では複数建物の同時最適化において操作変数が膨大になることへの適切な対応と、異なる需要カーブが運用計画にどのような影響を齎すかを検討した。本研究で用いている最適化手法は人工知能の一種とされており、エネルギーシステムへの適用例は多くない。従来手法よりも対象とできる最適化問題が幅広く応用が利く一方で、これまでの研究では操作変数が50~100個程度で大規模問題と呼ばれていた。しかし、本研究の今後の発展を見込めば、操作変数がゆうに100個を超える問題が想定される。そこで、私は200変数を超えるエネルギーシステムの最適化問題を対象に、効率の良い最適化手法をチューニングを施しながら適用することによって十分な精度を保ったまま高速に解を求める手法を確立した。 次に、2)の需要の不確実性への対応に関しては、本研究を実際の建物に適用するための一歩として、シミュレーション上で需要変動を意図的に生じさせ、それに対して、1) 計算の高速性、2) 需要への追随性、加えて3) そのあとの時間の運用計画への影響を最大限に抑制する、という課題を同時に達成するための再計算フレームワークの提案を行った。 また、本年度研究を進めていく最中で、当初の予定にはなかった海外研究者との共同研究を行なう機会を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
まず始めに、年間運用最適化を実現した技術を応用し、設計と運用の同時最適化の実装を試みる。設計の最適化は運用の最適化を以って果たされることに加えて、最適化問題としても複雑さを極めるため優先して検討すべき課題と考える。並行して、需要変動予測手法の開発も行なう。これは海外研究者との共同研究であるため継続的な議論及び研究が重要となる。 また、地域エネルギー供給を導入した大規模街区を想定し、モデリングの詳細化など今後の実地応用を念頭にシステム開発を行なう。 加えて、平成28年度より私が所属している学会にて、本研究に関わる委員会活動を開始する予定である。この委員会では最適化手法の実地への適用を主題として、計装関係の技術者や最適化に関心のある研究者と行なう。 学会発表は既に国内2件、海外2件を予定しており継続的に発表を行なう。また、査読ジャーナルは海外を重視しつつ、国内において必要であることに関しては随時投稿する予定である。
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Research Products
(11 results)