2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J07747
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
田中 由香 福岡大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 造血前駆細胞 / 受容体 / 筋組織 / DNAマイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生期の造血細胞はその周囲を取り囲む“ニッチ”による制御を受けているが、その制御システムの全容の解明には至っていない。本研究では特に、マウス胎仔筋組織中に存在する造血前駆細胞に焦点を当て、筋肉ニッチによる造血前駆細胞制御機構を明らかにすることを目的としている。平成27年度には、筋組織造血前駆細胞・筋組織の遺伝子発現データベース構築、及び前駆細胞の制御に関わる候補因子同定のため、1.胎生期筋組織及び筋組織造血前駆細胞の回収、2.DNAマイクロアレイ解析及び候補因子の選出・絞り込み、3.候補因子の発現解析を行った。 具体的には、1.C57BL/6マウス胎齢16.5日目の胎仔より大腿骨周囲の筋組織を採取し、筋組織の細胞全体(Muscle)と、そこからさらに純化したCD45陽性c-Kit陽性造血前駆細胞(HSPC)よりRNAを抽出した。2.得られたRNAサンプルを用いてDNAマイクロアレイ解析を行い、MuscleとHSPCとの間で発現に大きな差異を認める遺伝子のうち、特にHSPCで高く発現される受容体に着目して候補因子を10種選出した。3.リアルタイムPCR法を用いて遺伝子発現を検証することで、候補因子6種の発現パターンに関してマイクロアレイ解析の結果と同様の傾向であることを確認し、さらにタンパク質発現の解析に着手した。 全体として、これまで解析されていない筋組織造血細胞に関して、その制御因子候補を絞り込むと共に機能解析の準備を推進するなど、予定通り研究が進んでいる。平成28年度には、候補因子の機能解析、筋組織造血前駆細胞のニッチ細胞同定を実施することにより、筋肉ニッチによる造血前駆細胞制御機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、筋肉ニッチによる造血前駆細胞制御機構を明らかにすることを目的として、その制御に関わる因子及びニッチ細胞の同定を試みている。 平成27年度には、制御因子探索を目的とした試料採取・遺伝子発現データベースの構築を完了し、当該データベースの解析から10種の因子を選出した。さらに、リアルタイムPCR法を用いて遺伝子発現を確認し、制御因子の候補を6種まで絞り込むことができている。また、候補因子同定後に行う予定であるin vivo機能解析のツールとして、母体内のマウス胎仔に候補因子の阻害剤・中和抗体などを直接注入する手法(Exo-utero surgery法)のセットアップも完了していることから、おおむね予定通り研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、平成27年度に選出した候補因子に関してタンパク質発現を確認し、その機能解析を行う。 1.in vitro機能解析では、筋組織造血前駆細胞に対して候補因子(受容体)に結合するリガンドの添加培養を行い、造血前駆細胞の造血能・未分化性維持に対する影響を評価する。 2.in vivo機能解析では候補因子に対する阻害剤を妊娠マウスに投与、あるいはExo-utero surgery法を用いて胎仔に直接注入し、筋組織造血前駆細胞分画の量的・質的変化などを評価する。 3.胎仔大腿の組織切片を用いて候補因子の免疫染色を行い、その局在を解析すると共に、表面抗原の発現を指標に胎仔筋組織の細胞を分画し、各分画における候補因子の遺伝子・タンパク質発現を検討する。これにより候補因子を発現する細胞(ニッチと考えられる細胞)集団を同定し、胎生後期の筋組織内における筋組織造血前駆細胞のニッチ制御機構を明らかにする。
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Research Products
(4 results)