2016 Fiscal Year Annual Research Report
妊婦の骨盤周囲痛に対する動作評価デバイスを用いた疼痛改善プロトコールの構築
Project/Area Number |
15J07748
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森野 佐芳梨 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 妊婦 / 腰椎骨盤痛 / 動作解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、妊婦の骨盤周囲痛軽減を目的とし、疼痛のリスク因子となりうる動作を客観的に評価し、さらに動作改善の実施を目指している。平成28年度は、まず、前年度までに得られた妊娠中の骨盤アライメントと骨盤周囲痛、および歩行動作と骨盤周囲痛の関連性に関する研究成果を2編の論文にまとめ、国際学会誌での掲載が決定した。また、妊婦29名を対象として動作計測実験を行い、骨盤周囲痛との関連性を調査した。具体的には、骨盤の後方中心位置に慣性センサを装着し、前年度の調査で骨盤周囲痛との関連が強かった椅子の立ち座り動作を計測し、角速度データから動作評価指標を提案した。また、妊娠中に重要である体重増加量を考慮した指標も算出した。これより、妊娠中の立ち座り動作戦略の差異が骨盤周囲痛に関連していることが分かり、提案指標が妊婦の立ち座り動作評価に有益である可能性を示した。 次に、より実践に即した動作評価システムを実現するため、スイス連邦工科大学チューリッヒ校にて、慣性センサを用いて体節の角度情報を算出するアルゴリズムの構築を検討した。同校ではまず、センサから得られる加速度、角速度、地磁気データから、動作評価に必要な静止角度も含めた角度情報を得る手法を学んだ。次に、センサを体節の最適な位置に装着することで、体節の姿勢角を求めることを考案し、骨盤周囲痛の発症に関連すると考えられる体節および関節の動きの取得を考慮しながら慣性センサの装着位置を選択した。これより、センサの装着された体節に加え、各センサ間の角度情報の差異から関節角度情報を得ることを提案した。このシステムの検証実験として、健常者を対象とした椅子の立ち座り動作計測を行い、3次元動作解析装置OptiTrackの結果と比較を行った。これより、特に対象とした関節の屈曲伸展方向の角度変化量に関して提案手法とOptiTrackの結果の間に高い相関を認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、前年度までの研究結果をもとに、研究計画通り、妊婦を対象として慣性センサを用いた椅子の立ち座り動作計測実験を行い、動作評価指標を提案したうえで骨盤周囲痛との関連性を示した。この解析結果については、その途中経過も踏まえて、査読付き国内会議および国際会議において発表し、機械系学会および医療系学会の両分野にて専門家と議論を行った。その中で、研究の限界点として、視覚的な体節の姿勢角が理解できないことと、体幹の動作特長のみでは動作と疼痛との因果関係の解明が困難であることが挙げられた。これより、研究計画では、本年度は妊婦を対象とした介入研究を開始する予定であったが、より実践に即した慣性センサによる動作評価システムの構築を優先することとした。これにより、実際に妊婦を対象として骨盤周囲痛改善の介入を実施した際に、限界点として挙がってきたであろう、セラピスト側の動作評価結果の解釈や動作練習時の対象者側の学習のやりやすさといった点を前もって解決することができると考える。これにより、当初から目標としていた動作の可視化という点の向上を測ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、研究を進行していく中で、医療系および機械系の専門家からの助言により、システムをより実践に即したものにする必要性および可能性に関して見直しを行った。そこで、研究計画にあった介入研究を進めるよりも、最終的に構築したいシステムとしての完成度の向上につながる研究を優先させることになった。今後は、見直しによって明確となった問題点の改善を引き続き進めながら、介入研究および効果検証へとつなげていく。具体的には、まず、体節の複数個所に装着した慣性センサから動作評価に必要な体節および関節角度情報を得るうえで、現在高い精度で算出ができているものに加え、その他の情報に関しても、その必要性も踏まえて検討する。その後、これまでの研究で作り上げてきたシステムを妊婦に適用し、健常者との動作様式との違いを考慮することでシステムを改善した上で、介入研究へと進む予定である。
|
Research Products
(9 results)
-
-
[Journal Article] Association of lumbopelvic pain with pelvic asymmetry and gait pattern during pregnancy2017
Author(s)
Morino S, Takahashi M, Tanigawa A, Nishiguchi S, Fukutani N, Adachi D, Tashiro Y, Hotta T, Shirooka H, Nozaki Y, Hirata H, Yamaguchi M, Matsumoto D, Aoyama T.
-
Journal Title
J Womens Health, Issues Care.
Volume: 6
Pages: 1~5
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-