2015 Fiscal Year Annual Research Report
生合成による高分子量ε-PLおよび新規ポリアミドの創製とその高分子材料応用
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15J07756
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
牛丸 和乗 福井県立大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ε-ポリ-L-リジン / バイオプラスチック / 抗菌プラスチック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高分子量ε-ポリリジン(ε-PL)や新規ポリアミドの生合成による生産を目指す「生物工学的アプローチ」と、既存のε-PLや上記の新規ポリアミドの化学的改変による「高分子化学的アプローチ」という二種類のアプローチから、材料として利用可能な天然由来ポリアミドを創生することを目指した研究である。 当該年度における生物工学的アプローチとして、現時点では高分子量ε-PLや新規ポリアミドを生産する微生物の発見及び創生には至っていない。 高分子化学的アプローチに基づく検討では、ある種のアニオン性低分子をε-PL水溶液と混合するという単純な操作で、水に不溶なε-PL‐アニオン分子複合体(以降、PL‐アニオン複合体)が得られることが明らかとなった。このPL‐アニオン複合体は水には溶解しない一方で、様々な有機溶媒に可溶であり、原料として用いたε-PLおよびアニオン性低分子のいずれとも異なるユニークな挙動を示した。加えて、詳細な解析からPL‐アニオン複合体は熱可塑性を有することが明らかとなった。大気環境中で使用可能なε-PL由来のプラスチック材料は、我々が知る限りでは本研究で見出されたPL‐アニオン複合体が初めての例である。また、このPL‐アニオン複合体はε-PLの抗菌活性に由来する抗菌性を有しており、天然ポリアミド由来のプラスチックというだけでなく、高機能プラスチックとしての応用も可能な高付加価値材料であることが明らかとなった。現在、これらの成果に関して学術誌への論文投稿の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生物工学的アプローチに基づく検討では、高分子量ε-PLや新規ポリアミド創出に関する目立った成果は得られていない。一方、高分子化学的アプローチに基づく検討では、アニオン性低分子とε-PL由来の、抗菌性を有する機能性プラスチックの創出に成功し、想定以上の成果が得られている。 これらを総合して、現時点では期待通りに研究が進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の総括として、高分子化学的アプローチでは予想以上の成果を得ることができたが、生物工学的アプローチでは具体的な成果を得られていない。 従って、引き続きスクリーニング及び微生物の代謝改変に取り組むとともに、所属研究機関内外の研究者と協力し、当該年度以上に多様なライブラリーを構築・探索し、二年目は生物工学的アプローチでも成果が得られるよう注力していく予定である。
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Research Products
(3 results)