2015 Fiscal Year Annual Research Report
希少放線菌の運動性胞子が示す高速遊走運動の分子基盤の解明
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15J07768
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 知宏 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 微生物の運動 / 走化性 / ブレーキタンパク質 / トラッキング顕微鏡 / べん毛形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
トラッキング顕微鏡による遊走子の軌道解析では、軌道そのものの解析は行えたものの、走化性発揮時の詳細な軌道解析を行うことはできなかった。これは、濃度勾配の形成がうまくいっているかどうかの検証ができないために、遊走子の追跡を開始する点をどこにするか定められないことに起因すると考えられた。しかし、不完全な条件下ながら、野生株、Cheクラスター1,2の二重破壊株の遊走子は走化性誘引物質存在下であってもランダムに遊走していることが示唆された(危険率11%で誘引物質存在方向への有意な軌道の偏りあり)。 Millicellを用いた実験系により、Cheクラスター1のみが走化性に必要だとほぼ特定できた。 FtgAの機能解析では、UVによるランダム変異導入を行い、相互作用対象のタンパク質(以下、標的タンパク質)の探索を行った。そのために、標的タンパク質をコードする遺伝子に変異の入った株をスクリーニングする実験系の構築が完了した。現時点で、構築したスクリーニング系により偽陽性株は複数取得できている。スクリーニング継続中であり、遠からず標的タンパク質に変異の入った株が取得できると考えている。 AMIS75470の機能解析では、S. griseusに存在するチオレドキシンホモログ(SGR_690)をAMIS75470破壊株に導入してもべん毛を形成しなかったことと、チオレドキシンの活性残基であるCXXCモチーフ内のシステインをセリンに置換してもべん毛形成能が維持されたため、AMIS75470のべん毛形成における活性は、チオレドキシンによるものではない、と判明した。AMIS75470とSGR690をそれぞれ4分割し、キメラタンパク質を発現するプラスミドを構築してAMIS75470破壊株に導入したところ、AMIS75470の3番目の領域までの領域がべん毛形成能に必須だと判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トラッキング顕微鏡による軌道の解析がうまくいっておらず、走化性発揮時の軌道解析が行えていない。また、Millicellをプレパラートの代わりにトラッキング顕微鏡と組み合わせることもうまくいっていない。べん毛回転を停止させるブレーキだと考えているFtgAがCheクラスター1の中に存在しており、Millicellの実験によってCheクラスター1が走化性に必須だと考えられた。そのため、A. missouriensisにおける走化性では遊走方向の能動的な変化ではなく、好ましい環境でのべん毛回転停止が重要かもしれない。その場合、最高速度の物体を追跡するトラッキング顕微鏡では現象の把握が困難である可能性がある。こうした現状を打開するためには、遊走子をシングル化できるようなマイクロデバイスを新しく作製して観察を行うか、高解像度のカメラを用いて広い視野で観察する必要があると考えている。 FtgAの機能解析においては、標的タンパク質の決定には至っていないものの、実験系の構築は行うことができた。一方で、生化学的にFtgAの標的タンパク質を特定する試みも行ったが、FtgAの発現量が低く、検出できなかった。 AMIS75470の機能解析では、作用部位の絞り込みができた。一方で、単独の活性残基の特定には至っておらず、手詰まり感もある。
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Strategy for Future Research Activity |
トラッキング顕微鏡を活かすために、新たにマイクロデバイスを作製するか、高解像度カメラを使用し、より広い視野で観察を行う。これにより、走化性発揮時に軌道の方向に偏りがあるのか、あるいは停止が重要なのかをはっきりさせる。 FtgAの標的タンパク質の特定は、変異導入実験に基づくスクリーニングを継続し、当初の計画書に従って研究を行う。 AMIS75470の機能解析は、当初の計画では生化学的に作用対象を特定することになっているが、細胞内で発現しているタンパク質の絶対量が少ないために困難が予想されている。そのため、べん毛基部の組み立て過程を電子顕微鏡で観察し、ある程度対象が絞りこめた段階でTwo-hybrid法などによるスクリーニングを行って作用対象を探索する。活性残基の特定は、複数のアミノ酸残基をアラニンスキャニングするなどして決定する。
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Research Products
(1 results)