2016 Fiscal Year Annual Research Report
希少放線菌の運動性胞子が示す高速遊走運動の分子基盤の解明
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15J07768
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 知宏 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 放線菌 / 遊走子 / べん毛モーター / 線毛 / CRISPR/Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
遊走状態の胞子(以下、遊走子)のブレーキだと考えているFtgAの機能解析では、作用対象特定のため3種類の実験を行った。 (1)大腸菌内でのツーハイブリッド法(BACTH)により、べん毛基部タンパク質のFliG, FliN, FliIとFtgAの相互作用を検出した。FliGとFliNはべん毛基部のCリング、FliIはCリング内側のATPaseである。現在、in vitro実験により更なる解析を行っている。(2)FtgAの作用点がべん毛基部であることの証拠を得るために、蛍光タンパク質融合FtgA発現株を作製したが、これらの株の遊走子はブレーキがかからず、蛍光タンパク質によるFtgAの機能阻害が示唆された。(3)標的タンパク質に変異が入ることを期待したUV照射によるランダム変異導入株作製を行った。FtgAとは無関係な経路の存在が示唆された。現在、詳細について解析中である。 べん毛形成に必須なチオレドキシンの機能解析では、継続中だったキメラタンパク質発現株作製による、べん毛形成に必須な残基が”EKVEQ”と特定した。また、BACTH法により、FliWとAMIS75470の相互作用が検出された。FliWは細胞質内のFliC存在量の調節因子であり、現在詳細を解析中である。 当初の計画には記載していなかったが、線毛をコードする遺伝子群の破壊により、遊走子の凝集性が極めて高くなることを発見した。遊走停止時の遊走子の様子との関連などを解析中である。 さらに、遺伝子操作方法の改良に取り組んだ結果、ゲノム組込み型ベクターであれば確実に導入可能な接合用培地の処方を見出した。現在、遺伝子破壊株作製を容易にするために、CRISPR/Cas9システムの導入を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
FtgAの解析では、当初の予定通りFtgAの作用対象と考えられるタンパク質の絞り込みを行えた。また、UV変異導入により、ブレーキ関連タンパク質の制御が翻訳後の段階で行われているかもしれない示唆を得ることができた。 AMIS75470の解析では、チオレドキシンとしての活性ではなく、表面に露出すると考えられるEKVEQの5アミノ酸残基がべん毛形成に必須と特定した。さらに、FliCの存在量制御に関わるFliW-CsrAシステムとの関連が示唆されたことにより、DC1申請時には全く手がかりのなかったAMIS75470の機能の解析について大きく進展した。 さらに、線毛遺伝子群の興味深い性質を見出したこと、遺伝子操作が簡便(または確実)になりつつあることを考えると、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究課題の最終年度である。論文化を最終目標とし、以下の内容を実施する。 ブレーキタンパク質の研究は、in vitro実験によるFtgAと作用対象の相互作用の検出を目指す。また、蛍光タンパク質融合株はリンカーを挟む形で再度作製を行った。これらの株の観察を行い、局在性を示す。UVによる翻訳後制御の可能性は、原因遺伝子候補を変異株に相補して作製する株の表現型から、関与する遺伝子群の特定を目指す。論文化に際しては、翻訳後制御を除いた形での出版を目指す。 チオレドキシンの研究は、FliW-CsrAシステムとAMI75470の関連を明らかとする。FliW, CsrAの遺伝子破壊株を作製し、その表現型から他の細菌に保存されているFliW-CsrAシステムと同様の機能が果たされている査証を得る。また、FliW, CsrA, AMIS75470, FliC間でどのような相互作用が起きているのかin vitro で解析する。A. missouriensisの遊走子内でのタンパク質同士の結合を示すために、共免疫沈降実験などを行う予定であるが、細胞量の確保が極めて困難であるため、難航が予想される。論文化に際しては、共免疫沈降実験などは省いた形で検討する。 線毛の機能解析は、凝集性の定量と、相補株の作製を行い、電子顕微鏡写真等の結果をそろえて論文化する。 遺伝子操作系の改良は逐次実施し、6月末を目標にCRISPR/Cas9系の導入を完了する。これにより、必要な遺伝子改変株の作製が達成できる見込みである。
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Research Products
(2 results)