2016 Fiscal Year Annual Research Report
有効模型と格子QCD計算に基づいたQCD相図の高密度領域の解明
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15J07804
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
管野 淳平 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 量子色力学 / 虚数化学ポテンシャル / 有効模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子色力学(QCD)はクォークのダイナミクスを記述する理論であり、その第一原理計算として格子QCD計算があるが、有限化学ポテンシャル領域(有限密度領域)においては符号問題が生じるために計算が困難になる。しかし、虚数化学ポテンシャル領域では符号問題が存在しないため格子QCD計算が実行可能であり、また解析接続により有限実数密度領域の情報を引き出すことができる。よって、虚数化学ポテンシャル領域のQCD相構造を調べることは非常に重要である。 上記の背景のもとに、今年度は、今後発展が期待される2+1フレーバー格子QCD計算への知見を提供することを目的として、Polyakov-loop extended Nambu-Jona-Lasinio(PNJL)模型と呼ばれる有効模型を用いてQCD相構造を調べた。虚数化学ポテンシャル領域ではRoberge-Weiss(RW)周期性と呼ばれる特異な周期性が現れることが知られているが、本研究ではまず、RW周期性と虚数化学ポテンシャルの間の関係をQCDに基づき明らかにした。次にPNJL模型を使い、軽クォークの虚数化学ポテンシャルを変数としてQCD相図を描いた。その結果、ストレンジクォークの虚数化学ポテンシャルを軽クォークのものと等しくとった場合とゼロに固定した場合でカイラル相転移線とRW相転移線に大きな差異が現れることを示した。最後に軽クォークとストレンジクォークの虚数化学ポテンシャルを系統的に変化させ、解析接続に適した領域を発見した。上記の内容を論文としてまとめ投稿した。2+1フレーバーQCDの相構造を詳細に調べた点が本研究の意義と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究内容は、虚数化学ポテンシャル領域からの解析接続によりクォーク間ベクトル相互作用の強さを決定できる可能性があることを示唆しているが、実際に相互作用の強さを決定する作業が残っているのが不満点として挙げられる。しかし、実化学ポテンシャルだけでなく虚数化学ポテンシャル領域からもベクトル相互作用の強さを決定できる可能性があることを指摘した点は大きな収穫である。 また、今年度からは虚数化学ポテンシャル領域での格子QCD計算による中間子質量の決定にも着手した。現在は計算結果の解析中であるが、当初予定していた研究課題以外の課題にも着手できた。以上のことから判断して、研究は当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現状進行中であるクォーク間ベクトル相互作用の強さの決定、および格子QCD計算に基づく中間子質量の決定を優先課題とする。その後は当初の予定通り、ハイペロン自由度を含むWalecka模型の構築に従事する。近年、ハイペロン自由度を含んだWalecka模型の拡張が盛んに行われており、まず先行研究で提案されたWalecka模型で計算が行えるようにプログラムを作成する。次にクォーク自由度をPNJL模型やその拡張版であるentanglement PNJL模型、ハドロン自由度をWalecka模型で記述する2相模型を構築して中性子星の質量と半径を導出する。さらに、中性子星内部においてクォーク・ハドロン相転移が起こりうるかを調べる予定である。
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Research Products
(2 results)