2015 Fiscal Year Annual Research Report
ソ連社会主義体制下における合法・非合法雑誌に見る「記録文学」としての女性の証言
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15J07828
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
高柳 聡子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ソ連 / 女性文学 / 女性雑誌 / ヴォズネセンスカヤ / ロシア / サミズダート |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究のおもな対象である、ソ連時代の公式の女性雑誌『Rabotnitsaラボートニツァ』と『Krest’yankaクレスチヤンカ』の収集と読解を中心に研究に取り組んだ。 2015年12月と2016年3月の2回モスクワへ出張し、ロシア国立図書館にて、両誌の1920-30年代の全号を閲覧、必要な記事の複写を行った。入手した資料は現在分析中であり、2016年度中に「ソ連体制初期の女性雑誌における新しい女性の形象」に関する論文として発表する計画である。 また、資料収集の際に、ロシア国立国会図書館付属書籍博物館にて、ロシア初の女性雑誌「Modnoe ejemesiachnoe izdanie, ili Biblioteka dlia damskogo tualeta毎月のモード、あるいは夫人の洋装のための読書」(1779年)のネガフィルムを発見、写真での複写許可が出たため全号(1年分)全頁を撮影し持ち帰ることができた。この雑誌も文学作品集であるため、ロシア女性文学史の起点として当該研究の前史にあたる貴重なものとなる。 非公式に出版された女性雑誌の代表である『女性とロシア』は昨年度入手したものを読解した。代表的な執筆・編集者であるユーリヤ・ヴォズネセンスカヤの創作と思想について、「ソ連後期のフェミニズム思想――ユーリヤ・ヴォズネセンスカヤの執筆活動から」という論文にまとめ、早稲田大学ジェンダー研究所で出版した論集(『ジェンダー研究 早稲田からの発信/教育の深化のために』(彩流社刊)に収めた。 当該研究は、ロシアとの比較文化的テーマとしても発展しており、論文「Literary Image of Clothes: Mitshukoshi Department Store’s PR Jurnal “Jiko”」を執筆、ロシア・ロストフ通信大学の論集に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公式の雑誌の閲覧、複写(あるいは実物の入手)、分析については予定通りに進んでいる。非公式雑誌『マリーヤ』の所蔵先を探すことが課題として残っているが、ドイツにあることがほぼ把握できており、2016年度中に出張することで解決できると考えている。 資料の翻訳、分析結果をもとにした論文執筆・学会発表については、すでに準備に着手しており、計画通りに実行できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツのブレーメン大学に、ソ連時代の非公式雑誌『マリーヤ』所蔵の確認を取り、閲覧と複写のため出張予定。 『女性とロシア』『マリーヤ』は日本語への翻訳と分析を行い、論文執筆と学会での報告を行う。 『ラボートニツァ』『クレスチヤンカ』は100年分のバックナンバーを時代ごとに整理し、ソ連時代に女性の形象がいかにつくられたか、文学史的位置づけを検討し、論文や学会での発表として成果を発表する。
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Research Products
(5 results)