2015 Fiscal Year Annual Research Report
化学反応制御による非真空プロセスでの高品質薄膜作製とその特性制御
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15J07829
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内田 貴之 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 酸化スズ / 非真空プロセス / ミスト化学気相成長法 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気開放系ミストCVD法の酸化還元反応制御による薄膜特性のコントロールを目的として、主にp-typeのSnOとn-typeのSnO2を示す酸化スズ(SnOx)の作製と特性評価を中心に行った。p-type SnOは真空装置を用いて酸素量を厳密に制御した条件下でのみ作製がこれまで報告されているが、デバイス応用に向けて安定的にp-type SnOを作製する必要がある。 ミストCVD法によりSnOのように酸素量を制御する必要がある薄膜については積極的に研究が行われておらず、さらにその成膜手法の開発もされていない。そこで、新成膜手法を提案し、その簡易試作機を導入することでSnO薄膜の作製を試みた。 試作機を用いて成膜し、薄膜に対してX線回折測定(XRD), 透過率測定, X線光電子分光法(XPS)からSnOの報告値と同程度の結果を示すことを確認した。これらの結果から新成膜手法の効果を確認することができた。しかし、効果の詳細なメカニズム等については未解決であることから今後検証する必要がある。さらに、ミストCVD法の利点である前駆体溶液の薬品選択性の自由度の高さを利用して、上記と比較して塩基性の高い条件の溶液を用いて作製すると結晶性の高い薄膜が作製できることが確認できた。この結果から溶液濃度の変化に伴い薄膜特性が変化することが確認できた。これらの結果からSnOを成膜することはできたが、ホール測定からp-typeの電気特性を得るには至らなかった。これは、試作機を用いて作製した薄膜に対して二次イオン質量分析法を用いて膜中組成を解析した結果、試作機原材料由来と考えられるドナーとして働いてしまう元素が多量に混入していることが分かった。試作機の原材料を選定することで改善が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大気開放系ミストCVD法の酸化還元反応制御による薄膜特性のコントロールを目的に研究を行った。本年度はミストCVD法を用いて、これまで酸素量を厳密に制御した条件下でのみ作製が報告されている、p-type 一酸化スズ(SnO)の作製を目指した。これまでのミストCVD法の成膜手法では作製が困難であったために、新たなミストCVD法の成膜手法を提案し、その簡易試作器を作製した。簡易試作機を用いで作製した薄膜はX線回折測定(XRD)による結晶解析、X線光電子分光法(XPS)による化学結合解析からSnOが作製できることが確認できた。また、ミストCVD法の利点である前駆体溶液の薬品選択性の自由度の高さを利用して、塩基性の高い溶液を用いて作製すると結晶性の高い薄膜が作製できることが確認できた。これらの結果から、新たな成膜手法の効果、溶液雰囲気変化に伴う薄膜特性変化を確認することができた。これらの結果から「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
試作機を用いて成膜し、薄膜に対してX線回折測定(XRD), 透過率測定, X線光電子分光法(XPS)からSnOの報告値と同程度の結果を示すことを確認した。これらの結果から新成膜手法の効果を確認することができた。しかし、ホール効果測定からp-typeの電気特性を得るには至っていない。これは、試作機を用いて作製した薄膜に対して二次イオン質量分析法を用いて膜中組成を解析した結果、試作機原材料由来と考えられるドナーとして働いてしまう元素が多量に混入していることが分かった。試作機の原材料を選定することで改善が期待できることから、試作機原材料に注意して薄膜を作製し、ホール効果測定からp-typeを示す高品質SnOの作製を目指す。さらにデバイスへの転用を目指す。
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