2015 Fiscal Year Annual Research Report
空間語彙の非空間的用法が定着する動機づけに関する実証的研究
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15J07850
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
堀内 ふみ野 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 前置詞 / メタファー / 談話 / 文脈 / 意味拡張 / 反義語 / 類義語 |
Outline of Annual Research Achievements |
上下に関わる前置詞(over/under/above/below)および動詞接頭辞(over-/under-)に関する研究を行い、その成果を論文として発表すると共に、複数の学会で報告した。
英語前置詞の意味については、認知言語学の立場からこれまでにも多くの研究がなされてきた。しかし、それらの研究では、(1) 統語や談話の観点を含めた複合的な研究が不足しており、(2) 中心的・基本的とされる空間義からの派生関係が重視され、メタファー的意味に特化した振る舞いについては詳細に分析されない傾向にあった。また、(3) over/underは接頭辞としての用法も持つが(e.g. overlie/underlie)、over-に比べてunder-の分析は少なく、両者の詳細な比較もなされてこなかった。
今年度はまず、(1)の問題に取り組み、コーパスデータを用いて上下を表す前置詞の統語的・意味的な特性を複合的視点から比較した。その結果を『関西言語学会第40回』で口頭発表すると共に、論文集『KLS Proceedings 36』に投稿し、掲載が決定した。さらに、類義的なunder/belowに焦点を当て、品詞の相違や談話といった観点も取り入れて研究を発展させた論文が、『Colloquia 36』に掲載された。(2)については、above/belowのテクスト内の位置を指す用法に着目し、前置詞のメタファー的意味と文脈的・談話的要因の関わりについて分析・考察した。その成果を『第33回 日本英語学会』のスチューデント・ワークショップ(企画・責任者)で発表し、その一部をまとめた論文は『藝文研究 110』に掲載される予定である。(3)については、共同研究を通して動詞接頭辞over-/under-の非対称性を認知主体による事態の捉え方の観点から明らかにし、その成果を『第16回 日本認知言語学会』で口頭発表すると共に、論文にまとめて『日本認知言語学会論文集 16』に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上下に関わる前置詞(over/under/above/below)については、それらの意味・統語・談話を横断した研究を推進し、当初の計画以上の頻度で学会発表や論文投稿を実施できた。さらに、対象を動詞接頭辞にも広げたことで、当初の予定よりも包括的な研究を行うことができた。
しかし、成果発表と分析データの両面で、いくつかの課題も残った。第一に、紀要やプロシーディングスに複数の論文が掲載されたものの、単著での査読付き投稿論文の掲載には至っていない。第二に、現在までのところ分析対象が「上下」の軸に関わるものに限られ、他の空間軸に関する表現(起点・着点、内・外など)については分析が進んでおらず、体系的な記述には至っていない。第三に、人の認知的側面だけでなく、文脈や言語使用の観点を取り込んだ研究を目指しているものの、これまでの主な分析対象は書き言葉に限られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究対象を広げることで、より包括的・体系的な分析を目指していく。具体的には、観察データを書き言葉だけではなく自然会話や子供の言語使用にも広げることで、実際の言語使用や言語習得の観点からの分析を発展させる。また、分析の対象を「上下」に関わる前置詞以外の空間語彙にも広げる。これによって、空間語彙の使用を動機づける要因を、より多角的に分析していく。
成果発表の面では、単著で査読付きの投稿論文が掲載されることを目指しつつ、博士論文の執筆を推進する。
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Research Products
(9 results)