2015 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノ振動および反ニュートリノ振動の精密測定による新物理の探索
Project/Area Number |
15J07852
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古賀 太一朗 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 素粒子(実験) / ニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではニュートリノ振動の精密測定をすることで、標準模型を超える新物理を探索する。T2K実験は世界で最も良い精度でミューニュートリノ振動を観測することに成功してきたが、前置検出器(プラスチック)と後置検出器(水)の標的原子核の違いが大きな系統誤差の要因になっている。この誤差を減らすため、本研究では新検出器を開発し、水とプラスチック標的のニュートリノ反応断面積の違いを精密測定する。 今年度は新検出器の建設を行った。検出器は水タンク中にプラスチックシンチレータを格子状に並べた構造になっている。まず5月から7月にかけて検出器の一部を組み上げ、構造体の試験をし、そのデザインを改良した。また検出器の量産に向けて経験がない人でも容易に理解でき、組み立てられるような組み立て手順を確立した。8月から9月にかけて、シンチレータに波長変換ファイバーを接着し、反射材を塗り光量を評価するという一連のシンチレータ加工のシステムを確立した。実際にシステムを稼働させ、100チャンネル程度のシンチレータを加工し、十分な光量を得た。10月から検出器の量産を行い、1日あたり6人のシフトでのべ2か月かけて全1280本のシンチレータを加工し組み上げた。12月から2月にかけて、組み上げたシンチレータの光量評価を行った。一部のシンチレータを試験したところ、シンチレータ間のクロストークが予想以上に大きいことが分かった。これを抑制するため、組み上げたシンチレータに黒い塗装を追加した。3月に組み上げたシンチレータを水タンクにインストールし、検出器を完成させた。その後は宇宙線を用いた検出器の性能評価を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では600MeV付近のニュートリノビームを用いて測定を行う予定であったが、これに加えて1500MeV付近のニュートリノビームを用いた測定も行うように計画を修正した。ニュートリノのエネルギー領域によって支配的なニュートリノ反応モードが異なるため、異なるエネルギーの測定を行うことによってニュートリノ反応をよりよく理解することができる。これによって研究内容としては当初の予定より進展した。 計画としては予定していなかった1500MeV付近用の検出器の建設のため、当初の予定よりも多くの時間を費やしてしまった。2015年冬にニュートリノビームデータの取得を開始する予定だったが、2016年秋まで遅れてしまった。一方でビームの取得期間は当初の予定よりも短い1ヶ月を予定しているので、計画全体としては順調に進んでいる。これは当初の計画よりもビーム強度の大きな場所を選んだためである。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年5月末までに完成した検出器の宇宙線を用いた性能評価を終了させる。6月に検出器を実験ホールにインストールして既存の検出器と組みあわせ、検出器全体のコミッショニングを8月末まで行う。9月に検出器の試験結果をシミュレーションに実装し、検出器の系統誤差を評価する。10月にニュートリノビームデータを取得し、1か月間で2%以下の統計誤差を達成する。11月から12月にかけて結果をまとめ、ミューニュートリノと水標的の反応断面積およびプラスチック標的との反応断面積の比を3%以下の精度で測定する。 平行して今回建設した検出器を追加で新たに2台建設し、初めの1台とは異なる場所に設置して、より低いニュートリノエネルギービームを用いて水とプラスチック標的のニュートリノ反応断面積の違いを精密測定する。2016年9月に1台目の検出器のコミッショニングの結果をもとに建設手法を改良し、10月から12月にかけて検出器の量産を行う。2017年春に追加の検出器2台を実験ホールにインストールし、夏にコミッショニングを行う。2017年秋から冬にかけてニュートリノビームデータを取得し、3か月で2%程度の系統誤差を達成する。
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Research Products
(5 results)