2015 Fiscal Year Annual Research Report
斉梁文学と皇室権力の正統性─六朝思想史の再構築に向けて─
Project/Area Number |
15J07855
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
和久 希 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 六朝文学 / 斉梁 / 儒教 / 文化的正統性 / 文心雕龍 / 顔氏家訓 / 音律 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、六朝(魏晋南北朝)時代の中国古典文化の深底に潜在する儒教的エートスを文献実証的方法により検証し、儒教国家における皇室権力の文化的正統性の実相を明らかにしようとするものであり、これにより従来の儒仏道「三教交渉」を前提とする思想史観に対して、儒教を基軸とする六朝思想史像を再構築することを目的とする。平成27年度は主に六朝時代の最盛期と目される斉梁期における文章論の再検討に従事し、またその思想的基盤をなす後漢末~魏晋期における言語思想や文章論についての資料調査・整理・検討をおこない、研究成果を発表してきた。前者については『文心雕龍』を中心に、当時の文章論が儒教経典への回帰を志向していたことを国内シンポジウムにおいて報告した。後者については「魏晋玄学の言語思想」とそれをふまえた「六朝文章論の歴史的展開」について計2本の論文を執筆し、そのいずれもが書籍(共著)に収載されることとなったが、その刊行は次年度上半期に持ち越されることとなった。このほか、六朝文章論の主題のひとつでもある「文」と「質」との関係をめぐる議論について、その儒教経学的背景を探究した。これについては1本の学術論文の発表が見込まれている。あわせて、次年度に向けて、すでに斉梁期の文化を総合的に論述する『顔氏家訓』の「文章篇」「名実篇」「音辞篇」を中心とした検討と関連資料調査に着手しており、これらをふまえた成果も今後、訳注や学術論文のかたちで発表する予定である。また斉梁文学の特質でもある音律的整合性について、それを礼楽思想を含めた儒教との関わりにおいて理解すべく、資料の検討をおこなっている。以上の第1年度における研究実施状況によって、次年度以降に引き続く研究の土台はすでに組み上がりつつあり、今後の円滑な研究の遂行が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
斉梁期の礎石をなす後漢末~魏晋期にかけての探究を終えた点、斉梁文学においてもっとも重要な資料である『文心雕龍』の検討を果たせた点、斉梁文化を総合的に把握するための『顔氏家訓』の調査がすでに進行している点、思想分野・文学分野における数多くの研究成果を横断的に蒐集した点。以上の諸点により、第1年度の研究実施状況としてはおおむね順調に進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに着手している『顔氏家訓』に関しては、綿密な語釈にもとづいた訳注作業の推進が、当面の研究推進方策である。このほか、斉梁文学の音律的整合性に関する議論を儒教の古典的正統性の枠組みにおいて把握するためには、音韻学を含めた諸分野についての知見をさらに深める必要があり、第2年度はこのことを優先しておこなう予定である。
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Research Products
(4 results)