2015 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系アモルファス酸化物を対象とした磁気光学効果素子への応用研究
Project/Area Number |
15J07889
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中塚 祐子 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 磁気光学効果 / ガラス / 鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
短波長磁気光学効果(ファラデー効果)素子への応用可能な材料の創製を目指し、鉄を含むアモルファス酸化物を対象に、アモルファス酸化物磁性体の作製、構造解析、局所構造の解明、磁気光学的性質および光学的性質の調査を行った。 アモルファスFeO-SiO2薄膜は、アモルファス酸化物材料としては非常に大きなファラデー効果を示し、ファラデー効果素子の材料として有望である。これらの薄膜について、X線光電子分光、X線吸収端近傍構造、ラマン分光、赤外分光、屈折率測定、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を用いて、ファラデー効果発現メカニズムの解明を試みた。 TEM観察により、金属鉄クラスターの直接観察を行うことに成功した。制限視野電子回折図形(SAED)においては、金属鉄の(110)面に由来する弱いスポットが、アモルファス構造を反映したリングの外側に見られた。SAEDの金属鉄(110)面由来のスポットを用いて暗視野像を測定すると、3-5 nm程度の微小な金属鉄のクラスターが観察された。大きなファラデー効果は、アモルファスFeO-SiO2薄膜中に分散する金属鉄クラスターによるものであると考えられる。 4価の鉄イオンを含む酸化物は、強磁性を示すことが知られており、4価の鉄イオンを含むアモルファス酸化物の作製に成功すれば、大きなファラデー効果を示す材料が得られると予想される。高い光学的塩基度を持つ母ガラスに鉄イオンを導入することで、鉄イオンを高酸化状態とした。大気中で溶融急冷法によりサンプル作製を行い、光吸収スペクトルによって、4価の鉄イオンがアモルファス酸化物中に存在することを確かめた。光吸収スペクトルにおけるピーク位置は、既報の鉄4価のピークと一致した。さらに光吸収スペクトルの吸収極大波長から求めたスペクトル項間のエネルギー差は、田辺・菅野ダイアグラムにおけるエネルギー差に一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、平成27年3月4日~平成28年2月29日の期間、ドイツ・イエナ大学において研究を行った。特にアモルファスFeO-SiO2薄膜について、X線光電子分光、X線吸収端近傍構造、屈折率測定透過型電子顕微鏡観察により、大きなファラデー効果が薄膜中に分散する金属鉄クラスターによるものであることを明らかにし、ファラデー効果発現メカニズムの解明に大きく近づいた。これは期待以上の成果であり、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
金属鉄クラスターによる大きなファラデー効果発現が、他のアモルファス酸化物でも可能かどうか、検討を行う。4価の鉄イオンを含むアモルファス酸化物については、さらに高濃度で4価の鉄イオンを含むガラス組成の探索を行うと同時に、構造解析、局所構造の解明、磁気光学的性質の調査を行う。
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Research Products
(3 results)