2015 Fiscal Year Annual Research Report
ニュートリノ物理のための酸素・炭素原子核の巨大共鳴状態から放出されるγ線の研究
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15J07923
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
王 岩 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 巨大共鳴状態 / 超新星爆発 / 非弾性散乱 / ニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に大阪大学核物理センターにて、加速された陽子(400MeV)と酸素・炭素の非弾性散乱反応により巨大共鳴状態を作り、NaI(Tl)検出器でγ線を同時測定した。平成27年度は測定したデータの解析を主に行い、解析状況を学会等にて発表した。 まず磁気スペクトロメータの解析により、原子核の励起スペクルを得た。これを過去の実験データ等と比較し、今回の実験で原子核の巨大共鳴状態が精度良く(ΔEx=100keV @Ex=16-30MeV)測定されていることを確認した。また、炭素の励起スペクトルに見られる励起状態(Jp=1+,Ex=15.1MeV)は約9割の確率で15.1MeVのγ線を放出する。このγ線を校正源として用いてγ線検出器(NaIシンチレータ)の解析を行った。 GEANT4シミュレーションコードによりγ線検出器を再現し、15.1MeVのγ線のスペクトルを得た。これを実験データと比較したところ、良く一致していることをわかった。また検出効率も、実験値3.2%に対しシミュレーション値3.6%という近い値を得た。 以上の校正結果を用いて、巨大共鳴状態から放出されるγ線のスペクトル・放出率を得た。その結果、励起エネルギーの上昇とともに、放出されるγ線のエネルギーや放出率が大きくなることがわかった。また、放出されるγ線のエネルギーは娘核の核子崩壊エネルギー以下であることから、”巨大共鳴状態に励起された酸素・炭素原子核は核子崩壊後にγ線を放出する”という理論計算*に定性的に一致することを示した。* K. Langanke, P. Vogel, and E. Kolbe: Phys. Rev. Lett. 76 (1996) 2629.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ解析が順調に進み、その結果、理論計算との定性的な一致を示すことができた。しかしいくつか問題点が見つかったため、既存データの解析・問題点の改善に集中し、当初計画していた再実験は見送った。 得られたエネルギースペクトルを見ると、 予想していた光量よりも約30%低い位置にピークが見られ、測定時間とともにさらに低下していくことがわかった。測定時間毎にこのピークの位置を割り出し、光量の変化を補正した。また光量の低下は、ビーム由来のバックグラウンドによるものであることを、γ線検出器の前面に設置したプラススチックシンチレータの解析によって明らかにした。 測定計画ではγ線検出器の標準源として、酸素の励起状態から放出される6.9MeVのγ線や炭素の励起状態から放出される4.4MeVのγ線も用いる予定であった。しかし、γ線検出器のバックグラウンドを抑えるために、磁気スペクトロメータの磁場を調整した結果、これらの励起状態を測定することができなかった。このためγ線検出器の入射エネルギーと出力光量の線形性を確認するこができない。特に本実験では1MeVから20MeVの広い領域でγ線を測定しているため、線形性の確認は、系統誤差の低減においてに非常に重要となる。 そこでγ線検出器の線形性を評価するため、Cf中性子線源を購入した。Cf中性子線源からは数MeVの中性子が放出される。この中性子を水によって熱中性子まで減速させてからNiに照射すると、Niが中性子を吸収し最大9MeVのγ線を放出する。このγ線とAm/Be線源(Eγ=4.4MeV)やCo60線源(Eγ=1.3MeV)を用いて、γ線検出器の線形性を確認する。平成27年度では測定準備として、Cf線源+Niから放出されるγ線をGe半導体検出器によって測定し、9MeVのγ線が放出されていることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度に挙げられた問題点を改善する。光量の変化についてはスペクトルのフッィティング精度を上げる。また中性子線源とNiを利用し、γ線検出器の線形性を確認する。 データ解析を進め、巨大共鳴状態から放出されるγ線のエネルギー・放出率を絶対値として求める。この際、統計誤差・系統誤差含め10%を目安とする。実験結果を用いて、超新星爆発が起きた際に、中性カレント反応により検出されるニュートリノの事象数を見積もる。本研究の結果を博士論文としてまとめ、また学術雑誌へ投稿する。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] γ-rays from giant resonances of 16O and 12C with application to supernova neutrino detection2015
Author(s)
I. Ou, M. Sakuda, Y. Yamada, T. Shirahige, D. Fukuda, Y. Koshio, T. Yano, T. Mori, A. Tamii, N. Aoi, M. Yosoi, E. Ideguchi, T. Suzuki, C. Iwamoto, T. Ito, 
 M. Miura, T. Yamamoto,
 T. Kawabata, S. Adachi, T. Furuno, M. Tsumura, M.Murata et al.
Organizer
NuInt15
Place of Presentation
大阪大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2015-11-16 – 2015-11-21
Int'l Joint Research
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[Presentation] Measurement of γ-rays from 
giant resonances of 12C and 16O
in relation to supernova neutrino detection2015
Author(s)
I. Ou, M. Sakuda, Y. Yamada, T. Shirahige, D. Fukuda, Y. Koshio, T. Yano, T. Mori, A. Tamii, N. Aoi, M. Yosoi, E. Ideguchi, T. Suzuki, C. Iwamoto, T. Ito, 
 M. Miura, T. Yamamoto,
 T. Kawabata, S. Adachi, T. Furuno, M. Tsumura, M.Murata et al.
Organizer
OMEG2015
Place of Presentation
北京(中国)
Year and Date
2015-06-24 – 2015-06-27
Int'l Joint Research