2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J07993
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池 祐一 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 層の超局所理論 / ミラー対称性 / 構成可能層 / シンプレクティック幾何学 / ラグランジュ交叉 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も層の超局所理論の幾何学への応用について研究を行った。今年度は特にシンプレクティック幾何学・ミラー対称性との関わりについて研究した。 まず、層の超局所理論を連接・構成可能対応に応用した研究について説明する。NadlerとZaslowによって余接束の深谷圏は底多様体上の構成可能層のなす導来圏と圏同値となることが示されており、この点から連接・構成可能対応と呼ばれるトーリック多様体の連接層の導来圏と実トーラス上の構成可能層の導来圏との圏同値は一種のホモロジー的ミラー対称性とみなせる。今年度の研究ではある仮定の下でトーリック多様体から因子を除いた場合の連接・構成可能対応はもとの対応の圏論的局所化で記述できることを証明し、非コンパクトトーリック多様体に対する対応はコンパクトトーリック多様体に対する対応から従うことを示した。 次に、余接束内のコンパクト完全ラグランジュ多様体の交叉への応用に関する研究について説明する。Tamarkinは余接束内の2つのコンパクト集合が与えられたとき、一方をハミルトニアンアイソトピーで移動して交叉しないようにできるか否かを判定できる圏を層の導来圏の商圏を取ることで構成した。すなわち、2つのコンパクト集合にそれぞれマイクロ台を持つ層が存在してその商圏における射の空間が0でなければ、一方を移動しても必ず交叉を持つのである。今年度の研究ではコンパクト完全ラグランジュ多様体2つの交叉点の個数は、Tamarkin圏におけるGuillermouの層量子化の間の射の空間の次元で下から評価されることを証明した。また、この射の空間は底多様体の通常のコホモロジーと同型になることも証明し、コンパクト完全ラグランジュ多様体2つの交叉点の個数は底多様体のベッチ数の和で下から評価されるというNadlerと深谷・Seidel・Smithの結果のフレアー理論を用いない別証明を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非コンパクトトーリック多様体に対する連接・構成可能対応に関する研究および層量子化を用いたラグランジュ交叉へのアプローチはおおむね成功したと考えている。特に余接束内のコンパクト完全ラグランジュ多様体の交叉に関する研究では、交叉点の個数をTamarkin圏での射の空間の次元で下から評価するだけでなく、その空間が底多様体の通常のコホモロジーと同型になることも研究途中で示すことができた。系として得られたNadlerと深谷・Seidel・Smithの結果の層の超局所理論による再証明にも大きな意義があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
余接束のラグランジュ多様体の交叉に関してTamarkin圏での射の次元による評価は得られたものの、シンプレクティック幾何学におけるラグランジュ部分多様体のフレアーコホモロジーとの関係は未だに不明である。これを解明するため層係数のモース不等式だけでなくモース複体の構成に取り組みたいと考えている。また層の超局所理論で特有のμhomという操作のシンプレクティック側での解釈についても引き続き研究を行いたい。
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Research Products
(8 results)