2015 Fiscal Year Annual Research Report
3次元多様体の諸性質のランダムネスから見る特徴付け
Project/Area Number |
15J08142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
正井 秀俊 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 3次元多様体 / 写像類群 / ランダムウォーク / 位相的エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,コンパクトな曲面の写像類群上のランダムウォークについて研究した.ランダムウォークで得られる元をランダム写像類と呼ぶ.以降,ランダム写像類に関する主張は漸近的に確率1で成り立つ場合に,断定の形で述べる.写像類に対しては写像のべき,持ち上げにより被覆関係が定義される.そのような被覆で定義された被覆関係において,写像類群上に通約関係を定義する事ができる.各通約類において,被覆関係で順序が定義される.擬アノソフな写像類からなる通約類は被覆による順序において,必ず最小元をもつことが知られている.本年度の研究では,ランダム写像類が最小元となることを示した.また,3次元双曲多様体の写像類群は有限群となる事が知られている.本年度には曲面が閉曲面の場合,ランダム写像類から作られる写像トーラスは対称性を持たない事を示した.本年度はランダムウォークの曲面上の力学系についても研究した.曲面上の微分同相写像に対して,位相的エントロピーと呼ばれる,写像のベキにより区別されうる軌道の数の指数的増大度を測る不変量が定義されている.ランダムウォークに対しても微分同相写像のアナロジーとして位相的エントロピーが定義できる.Thurston は擬アノソフ微分同相写像の位相的エントロピーはタイヒミュラー空間上のtranslation の長さと一致することを示していた.本年度の研究では,ランダムウォークに関しても同様の結果が成り立つ事を示した.すなわちランダムウォークの位相的エントロピーはタイヒミュラー空間上のドリフトと呼ばれる,translation の長さに対応する値と一致する事を示した.本結果により,Thurston の一連の結果の``ランダム化”ができたと言える.本年度は国内外の研究集会において14回講演を行い,様々な研究者と議論を行った.最後に,本年度は3本の論文が受理され,最終校正などを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画において1年目に行うこととして挙げた,ランダム写像類の最小性に関してまとまった結果を得,論文を書いた.また,もう一つ1年目の目標に挙げたランダム写像類に対する計算機実験に関しても,満足のいく実験結果を得ている.さらに,ランダム写像類から得られる力学系についての研究も行い,論文を執筆しており,本年度の研究は当初の計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
ランダム写像類の性質として成り立つ可能性が高いものを研究計画に挙げているため,それらの問題に取り組んでいく.また,ランダム力学系として写像類群上のランダムウォークを捉えると,様々な問題が考えられることがこれまでの研究でわかっており,そのような問題にも取り組んでいく.
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Research Products
(15 results)