2015 Fiscal Year Annual Research Report
有機薄膜太陽電池のブレークスルーにむけて:弱い分子間相互作用の定量的解明
Project/Area Number |
15J08155
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
米澤 恵一朗 千葉大学, 融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 光電子分光 / 有機分子半導体 / 電子状態 / 界面相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機薄膜太陽電池のブレークスルーを引き起こすため異種分子間での相互作用が各々の電子状態に与える影響を定量的に明らかにすることが本申請課題の目標である。そのために我々は、試料作成に用いる基板材料には有機分子が物理吸着できる系を選択している。しかし、物理吸着界面であっても、この界面で働く弱い相互作用により有機分子の電子状態が変調されてしまっていることが判明した。本申請課題の目標を達成するためにはこの相互作用による電子状態への影響を無視することはできない。そこで、基板から受ける相互作用の影響を明らかにする実験を春から新たに開始した。自前装置での実験を主軸としつつ、それに加え6月に中国蘇州大学FUNSOMにて高分解能単色XPS装置を用いた実験を、8月にはドイツの放射光施設BESSYIIにある時間分解型光電子分光アナライザーを有するビームラインで実験を行なった。これらの実験結果を秋までにまとめ、国内学会(3件)と国際学会(2件)にて発表した。また、Charge transfer states appear in the π-conjugated pure hydrocarbon molecule on Cu(111)というタイトルで 学術誌Applied Physics Expressに投稿し受理された。秋からは、異種分子間の相互作用が各々の電子状態に与える影響を明らかにするための実験を開始した。実際には、分子科学研究所の放射光施設UVSORにある角度分解光電子分光実験装置を用いて解明を試みた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異種分子間での相互作用が各々の電子状態に与える影響を定量的に明らかにすることが本申請課題である。しかし研究を行う中で試料を作成するするために用いた基板材料とターゲット分子との間の相互作用の影響が無視できないことが明らかになったため、年度の初めは計画を変更して、有機分子の電子状態への基板より受ける相互作用の影響を明らかにする実験を新たに開始した。これらの実験は、夏までにはおおよそ結果をまとめることができ、夏以降は半年遅れではあるが当初の計画通りに進めることができた。今年度前半に行なった研究成果は3件の国内学会と2件の国際学会、また学術誌にて1報発表したので研究はおおむね順調に進展しているといえよう。 夏以降は、計画に通り異種分子間の相互作用が各々の分子の電子状態に与える影響を光電子分光法を用いて明らかにすることを試みた。詳細な観測結果を得ることに成功したため、分子の配向変化等も含めて包括的な議論が今後できると考える。これらの結果は、来年度の前半には学会や学術誌等で発表する予定である。 しかし、残念ながら今年度は前半の研究計画を変更した結影響もあり走査型トンネル分光法による有機へテロ分子膜内の局所電子状態観測実験は行なえなかった。来年度中に必ず行ないたいと考える。 また、本年度の最大の目標であった博士論文をまとめ学位を取得するという目標は達成できたことも順調に研究が進展している結果だと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究目標は以下の2つに設定する。①有機へテロ膜中における有機分子の軌道分布を角度分解光電子分光法により実測する。②有機へテロ単層膜中の局所電子状態を走査型トンネル分光にて実測する。 ①に関して5月の頭にドイツにて角度分解光電子分光法を用いた分子の軌道分布実測の研究に特化したワークショップが開催されることとなったので、参加して勉強を行なう予定である。また、6月頭にはドイツのシンクロトロン施設BESSYIIにてグラファイト上のフッ化ペンタセン単層膜について時間分解型アナライザーを用いた角度分解光電子分光実験による軌道分布の実測を試みる。この実験を行なうためにはドメインサイズの大きい高秩序な有機単層膜を得ることが必須であるため上手くいかない場合は、これまで基板として用いていたグラファイトをグラフェン基板に変更する可能性もある。 ②は、27年度行なうことができなかった実験である。この実験を行なうためにはシンガポール国立大学Wei Chenグループの実験装置を用いる必要があるため年度の早いうちから連絡を取り合い実験を実現させたい。 成果発表としては、金属基板上からのより強い相互作用による有機分子の電子状態変化を実験的に観測した結果をまとめたものと、有機へテロ単層膜中の異種分子の混合比に依存した電子状態変化についてまとめた論文を発表する予定である。
|
Research Products
(10 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Thickness and Substraate Dependent Thin Film Growth of Picene and Impact on the Electronic Structure2015
Author(s)
Takuya Hosokai, Alexander Hinderhofer, Fabio Bussolotti, Keiichirou Yonezawa, Christopher Lorch, Alexei Vorobiev, Yuri Hasegawa, Yoichi Yamada, Yoshihiro Kubozono, Alexander Gerlach, Satoshi Kera, Frank Schreiber, and, Nobuo Ueno
-
Journal Title
The Journal of Physical Chemistry C
Volume: 119
Pages: 29027-29037
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Presentation] Surface Coordination Chemistry to Control the Charge Transfer at an Organic/Metal Interface: Role of Cl atom2015
Author(s)
K. Yonezawa, T. Ueba, Y. Ioka, T. Tago, Q. Wang, C. Zwick, Y. Suda, F. Bussolotti, M. Grünewald, N. Aghdassi, H. Yamane, R. Forker, N. Kosugi, T. Fritz, S. Duhm, H. Yoshida, and S. Kera
Organizer
Electronic Structure and Processes at Molecular-Based Interfaces (ESPMI VII)
Place of Presentation
Arizona, America
Year and Date
2015-10-14 – 2015-10-16
Int'l Joint Research
-
-
-
-