2016 Fiscal Year Annual Research Report
高移動度環状電子輸送材料群の開発と自己組織化による機能発現
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15J08167
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡邊 雄一郎 山形大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 有機EL / 電子輸送材料 / n型有機半導体 / 水素結合 / 分子配向 / ピリジン / ターピリジン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、ピリジン含有電子輸送材料が示す自己組織化現象とその分子骨格の水素結合能の相関を明らかにするために、分子設計指針の導出を試みた。昨年度に着目したビピリジン同様に平面性が高く水素結合能を有するターピリジン(TPY)に着目した。2,2':6',2"-TPYは、代表的な遷移金属の三座配位子として知られているが、電子吸引性、弱い水素結合のアクセプター能などの利用例は非常に少ない。また、TPYの構造異性体は、基礎物性も明らかとなっていないため、TPY外縁部のピリジンの置換位置を、2位から4位まで系統的に振り各種固体物性への影響を詳細に検証した。 その結果、ピリジンの置換位置によって電子親和力が0.6 eV、電子移動度が大きく異なる現象を見出した。移動度向上の起源を究明するため、NMR・単結晶X線構造解析・多入射角分光エリプソメトリーによりピリジンの置換位置と非晶質膜内の分子配向性を調査した。その結果、分子内水素結合のみ有する2-TPYはランダム配向を、分子内・分子間の水素結合が可能な3-TPYは水平分子配向を示した。これは、分子外縁部の水素結合能が分子配向に重要で、電子移動度向上に繋がることを強く示唆する結果である。一方で、4-TPYはその強い相互作用によりラフネスの大きい結晶性膜を形成することが明らかとなった。これは、化学構造の小さな違いが非晶質膜に大きな影響を与えることを意味する。TPY誘導体を有機ELデバイスへと応用し評価した結果、3-TPYは100 cd m-2の輝度において、駆動電圧2.5 V、電力効率104 lm/W、外部量子効率23.5 %を与えた。これは、2-TPYに比べて駆動電圧が0.5 Vの低電圧化、1.3倍の電力効率であった。以上の結果は、TPY誘導体の電子輸送材料としての有用性とともに、有機デバイスへの応用可能性を示したと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、自己組織化能を有する高性能電子輸送材料の開発し、有機エレクトロニクスの分野を大きく前進させることである。平成27年度は平面性の高いビピリジンの外縁部にピリジン環を導入し水素結合能を発現することで自己組織化を試みた。本年度は同様に平面性が高く、水素結合能の発現が期待できるターピリジンに着目した。その結果、配向性薄膜の作製に成功、電子輸送材料として有機ELデバイスへ応用し高性能化を示すことができた。本成果は、我々の分子設計指針を明確にするだけでなく、ターピリジン異性体の固体デバイスへの新たな応用を可能にすると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発した分子内・分子間に水素結合能を有する材料群は、非晶質膜内で分子配向を示すことが明らかになっている。しかしながら、それぞれの水素結合と薄膜内部構造の相関やその相互作用が与える影響は明らかになっていない。より明確な分子設計指針を抽出するためには、この影響を明らかにする必要がある。そこで、今後は、これら電子輸送材料の誘導体をさらに合成し、その内部構造の解明を試みる。新たに高輝度X線による薄膜解析も取り入れる。また、電子輸送層に加えて、リチウム錯体電子注入層の開発についてさらに研究を進め低電圧デバイスの実現を目指す。
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Research Products
(9 results)