2015 Fiscal Year Annual Research Report
サバクトビバッタの相変異に関与する遺伝子の探索と機能解析
Project/Area Number |
15J08228
|
Research Institution | 国立研究開発法人農業生物資源研究所 |
Principal Investigator |
管原 亮平 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 昆虫成長制御研究ユニット, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | サバクトビバッタ / 相変異 / 体色制御 / ホルモン / RNAi / 強制発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
孤独相および群生相幼虫、またアルビノ幼虫、コラゾニンノックダウン幼虫のトランスクリプトーム解析を行い、発現量に差がみられる遺伝子について二本鎖RNAを作成した。200種の遺伝子をそれぞれ群生相幼虫で発現抑制し、体色に影響を与える遺伝子を探索した。その結果、コラゾニン遺伝子およびコラゾニン受容体遺伝子に加えて、これまで機能が同定されていない新規の遺伝子において、体色の減退が観察された。今回みつけた新規の遺伝子はコラゾニンの下流で機能する遺伝子であった。また、ノックダウン時に体色の表現形は観察されないが、コラゾニンによって制御されるメラニン合成関連遺伝子が複数認められた。これまでコラゾニンがどのようなメカニズムで群生相の体色を制御しているのか全く分かっていなかったが、今回の発見で制御機構の全体像をつかむ上で大きな一歩となった。 バッタ個体における強制発現系を構築するために、強い発現を誘導するプロモーターを探索した。フタホシコオロギやトノサマバッタからアクチンプロモーターを単離し、ルシフェラーゼをレポーター遺伝子としてトノサマバッタ幼虫を用いて評価したが、期待どおりの強い発現は誘導できなかった。polyAシグナルを変えても大きな改善はみられなかった。カイコで汎用されているウイルス由来のプロモーターを用いた場合ではある程度の発現誘導が検出されるものの、目的とする強い発現には至らなかった。バッタ体腔に発現コンストラクトを導入すると、頭部、胸部、腹部いずれにおいてもルシフェラーゼ活性が検出された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の大きな目的はバッタの相変異機構の解明である。バッタの体色は相変異の過程で大きく変化するので、相特異的な体色の制御機構を解明することは、相変異全体の理解には欠かせない要素である。今回、相特異的な体色を制御する重要な因子をコラゾニン以外に同定することができ、今後の研究に向けて大きな一歩となった。これまでコラゾニンが相特異的な体色発現に重要であるということは分かっていたが、どのように黒化を誘導するのかについては全く分かっていなかった。今回新規に同定した遺伝子はコラゾニンの下流で機能するため、この謎を解くキープレイヤーであると思われる。また、コラゾニンが制御するのは体色だけではないので、この新規遺伝子が制御するのは体色だけであるのか関心を持っている。強制発現系の実験は期待したような結果は得られなかったが、本課題の目的達成にむけて問題なく遂行できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
新たに見出した体色制御遺伝子は、群生相バッタに特有のF/C値(後腿節長を頭幅で割った値)も制御しているのか詳細に解析する。現在、この遺伝子の部分的なDNA配列しか同定できていないため、RACE法によって全長配列のクローニングを試みる。全長が決定できれば、この遺伝子が他の昆虫目にも存在しているのか探索する。また、バッタのどの組織および器官で発現しているのか、発育ステージ段階で差があるのか調べたい。 1年目の研究において、RNAiでは顕著な表現形が観察されないがコラゾニン経路の下流で機能していると思われる遺伝子が複数見つかった。これらの遺伝子が、新規体色制御遺伝子の下流に位置するのかどうか検討する。 また、トノサマバッタにも本遺伝子のオルソログが存在しているので、サバクトビバッタと同様の制御がされているのか検討する。
|
Research Products
(5 results)