2015 Fiscal Year Annual Research Report
東寺講堂諸像を中心とする天部形の研究――兜跋毘沙門天の図像をめぐって――
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15J08237
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 早紀子 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 東寺講堂諸像 / 四天王 / 兜跋毘沙門天 / 地天 / 鬼 / 毘那夜迦 / 密教 / 美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一に、空海の構想に基づく東寺講堂諸像のうち、これまで密教思想や密教図像との関連が看過されてきた四天王像に注目し、その密教的意義を明らかにすることにある。その上で第二に、東寺講堂諸像における四天王と主要十五尊との関係を考察し、二十一尊全体の思想的背景に関する綜合的理解を提示することを目標としている。 初年度に当たる平成27年度は、東寺講堂四天王中の多聞天に地天・二鬼を伴った「兜跋」毘沙門天の新図像が採用されていることに着眼し、東寺講堂多聞天像と辟除結界との関連を明らかにした。その過程で「兜跋」毘沙門天がヴィナーヤカと密接に関わるという新たな知見があり、研究遂行上、ヴィナーヤカに関する資料収集の必要が生じた。そのため、平成27年度に予定していた海外調査を平成28年度に繰り越すこととなった。一方、八世紀の中国および九世紀の日本におけるヴィナーヤカに関する検討からは、常随魔とされるヴィナーヤカの中にガナパティを主とする善きヴィナーヤカが存在することが判明した。これを踏まえ、空海の『陀羅尼集経』理解について考察した結果、東寺講堂四天王像が壇場結界と関わる機能を有していたことが明らかになった。そこで次年度は、空海による図像再構成の問題を踏まえ、壇場結界という視点から東寺講堂四天王像の密教的意義を追究していく計画である。 研究成果の公表に関しては、東寺講堂不動明王像との関連から「東寺西院不動明王像の制作背景に関する考察」と題する口頭発表を日本宗教文化史学会第19回大会(2015年6月)で行い、その内容をまとめた論文「東寺西院不動明王像の制作における宗叡の関与」が『日本宗教文化史研究』第38号(2015年11月)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東寺講堂四天王中の多聞天像に関して地天・二鬼とヴィナーヤカとの関連を追究する必要が生じたため、予定していた海外調査を平成28年度に延期した。しかしながら、その他の調査研究や成果公表については大凡当初の計画通りに進み、ヴィナーヤカに関する新知見も得られたため、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も国内外での遺品調査と資料収集を継続し、当初の研究計画にしたがって東寺講堂四天王像の密教的意義および東寺講堂諸像全体の思想的背景について考究していく。
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Research Products
(2 results)