2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J08254
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 太志 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 光合成 / 光化学系II / PsbP / Cytb559 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.PsbPのN末端を介した相互作用がPSIIの構造と機能に及ぼす影響を、ホウレンソウPSII膜を用いたin vitro再構成系により解析した。その結果、PsbPのN末端を介したPsbEサブユニットとの相互作用は、チラコイド膜ストロマ側の構造変化を伴い、Cyt b559の酸化還元電位の回復を引き起こすことを認めた。一方、合成したPsbPのN末端ペプチドは、Cyt b559の酸化還元電位の回復に加えて、PSIIの水の酸化側の阻害を引き起こすことが明らかとなった。Cyt b559は、PSIIの活性化状態に応じて複数の異なる酸化還元電位をとり、PSII内部における副次的電子伝達に関与すると考えられている。すなわち、PsbPのN末端配列は、PSIIの分子集合過程において複合体内部での電子の流れを制御し、PSIIを損傷から守る機能を果たしていることが示唆された。 2.PSIIとの静電的な相互作用に重要であるPsbPの塩基性ポケット近傍に存在するアミノ酸残基を置換したPsbP変異体を大腸菌で作製し、ホウレンソウPSII膜を用いたin vitro再構成実験によりその機能評価を行った。その結果、当該変異体はPSIIとの結合が増強されており、それを結合したPSIIの酸素発生活性は野生型を結合したものよりも高く、またその活性はより長時間維持されることを認めた。 3.緑藻クラミドモナスのPsbP欠損株において外来PsbP遺伝子を導入し、PSIIの機能相補に成功した。さらにC末端にHisタグ配列を付加したPsbP遺伝子を発現する形質転換株も、野生型PsbP発現株と同様の酸素発生活性を示した。そこでチラコイド膜を単離し、1% n-dodecyl-α-D-maltoside存在下で穏やかに可溶化後、金属アフィニティークロマトグラフィを行い、PSII複合体の精製を行った。Blue Native-PAGE (BN-PAGE) 解析、およびゲルろ過クロマトグラフィ解析の結果、アフィニティー精製されたPSIIはかなり均一な複合体の状態であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PsbPのN末端配列を介した相互作用が、PSIIの構造と機能に及ぼす影響に関して新規な知見を得、論文発表や学会発表を行うことができた。また、PSIIとの結合を増強することができるPsbPの変異を見出した。加えて、クラミドモナスでのPsbPの機能相補系を構築し、Hisタグ付加PsbPを利用してPSII超複合体を精製可能な系を確立した。これは、変異型PsbPのin vivoでの機能解析や、緑色植物型PSII超複合体の構造解析を行う上での基盤となると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
PsbPの個々の相互作用がPSIIの構造と機能に及ぼす影響に関して、in vitroとin vivoの両面からさらなる解析を進める。Hisタグ付加PsbPを利用して精製したPSII複合体サンプルに関して、電子顕微鏡解析による構造解明に挑戦する。同時に、部位特異的スピンラベル法とPELDOR解析によりPsbPとPSIIコア内部に存在するラジカル分子間の距離情報を得る。そして、電子顕微鏡解析から得られた構造情報に、化学架橋剤を用いた相互作用相手の同定結果、PELDOR解析から得られた距離情報、変異型PsbP, PsbQを用いた機能解析実験の結果を統合し、緑色植物型PSII-LHCII超複合体の全体像を構築する。
|
Research Products
(3 results)