2016 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュにおける母性mRNA分解機構の研究
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15J08260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大籠 健司 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 母性mRNA分解 / ORF依存的分解 / ゼブラフィッシュ / 翻訳 / MZT |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物の胚は、受精後しばらく転写が不活性化状態にある。そのため、発生初期のタンパク質合成は卵形成時に卵内に蓄積された母性mRNAに依存する。しかし、これらの母性mRNAの大半は新規の転写活性化と同調して選択的かつ急速に分解される。この母性mRNA分解はmiRNAが引き金となっていることが知られているが、実際にmiRNAによって分解される母性mRNAはほんの一部にすぎない。そこで本研究では、ゼブラフィッシュをモデルとしてmiRNA非依存的な未知の母性mRNA分解機構を明らかにすることを目的とし、今年度は以下の成果を得た。 【rnf180 mRNAの分解に対するORFの必要十分性の確認】 平成27年度までに、モデル遺伝子であるrnf180 mRNAの分解には自身のORFが必要であることが示唆された。そこで、安定な遺伝子として知られるvasa mRNAの3´UTRをrnf180 mRNAのORFと融合させたレポーターを作製し、受精卵へのマイクロインジェクションを行った。その結果、rnf180 mRNAのORF上には分解を誘導する因子が存在することが示唆された。また、モルフォリノオリゴを用いて自身の翻訳のみを阻害した場合、内在のmRNA同様にレポーターmRNAにおいても分解が抑制されたことから、rnf180 mRNAの分解には自身の翻訳が必要であることが明らかとなった。 【新たなモデル遺伝子の決定・解析】 他の母性mRNAにおいてもrnf180 mRNAと同様の現象がみられるかどうかを明らかにするため、モデル遺伝子の決定を行い、転写依存性等の基準を用いて新たにいくつかの遺伝子を候補として選抜した。これらの遺伝子について、mRNAの分解やポリ(A)鎖の短縮を解析したところ、新たにchtopb、apopt1の2つを最適なモデル遺伝子として決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は、母性mRNAの分解にはこれまでに報告されている分解機構と同様に3´UTR上に分解を誘導するシス配列が存在するという推測の下に研究を行っていた。しかしながら、平成27年度に得られた結果から、rnf180 mRNAの分解にはORFが必要であることが示唆されたため、研究計画や研究方針を再考する必要が生じたため、進度が遅れてしまっている。また、レポーター実験で得られた結果の再現性を確認することに予定よりも時間を要してしまった。しかしながら、平成28年度においてrnf180 mRNAの分解には自身の翻訳と自身のORFが必要であることが確かめることができたため、今後の研究方針を決めることができた。さらに、レポーター実験の再現性を確認する過程でインジェクションやレポーター実験の技術的な進歩もあった。したがって、今年度では後れを挽回することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、mRNA の安定性とコドン適応度の関係性が注目されており、実際にゼブラフィッシュにおいては、母性分解経路に分類される母性mRNA の安定性がコドン適応度に依存することが報告されている(Mishima etal., 2016)。一方で、接合子性分解経路においてはmiRNA に依存した母性mRNA 分解に着目した研究がこれまで行われてきた。しかし、今年度得られた本研究の結果から、接合子性分解経路に分類されるrnf180mRNA の分解にも自身の翻訳とORF が必要であることが示唆された。したがって、接合子性分解経路にお いては、コドン適応度およびMZT において新規に発現する何らかの接合子性因子の両方に依存した、これまで知られていなかった新たな分解機構が存在する可能性が考えられる。 以上のことから、今後は母性mRNA 分解とコドンの関係性について解析を進めていくことを計画している。具体的には、rnf180 mRNA のアミノ酸配列を変化させずに塩基配列のみを変化させたレポーターmRNA を作製し、同様のレポーター実験を行うことにより、コドン適応度と母性mRNA 分解との関係について検証することを計画している。また、rnf180 mRNAで見られる現象が、他の母性mRNAにおいても見られるかどうかを検証するため、新たに決定したモデル遺伝子について同様のレポーター実験を行うことを計画している。
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