2015 Fiscal Year Annual Research Report
意思決定における選択と選好の循環的連鎖の認知神経科学的メカニズムの解明
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15J08281
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中村 航洋 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 選好評価 / 顔魅力 / 美的選好 / 視覚的注意捕捉 / 神経美学 / 経頭蓋直流電気刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,意思決定における選択と選好の循環的連鎖に関する研究のうち,最終的な選好意思決定が生じるまでの選好評価過程(プレディクティブな過程)について3つの研究を実施した。 第1に,自動的かつ無自覚的に行われる選好評価が可能になるための最小条件について検討するため,評価対象の意識的知覚を抑制する連続フラッシュ抑制を用いた心理学実験を実施した。その結果,顔選好は顔の意識的知覚に先行して評価され,好ましい顔はその顔が意識的に知覚される前から視覚的注意を捕捉することが明らかになった。これらの研究結果については,国内外の学会で発表を行った。 第2に,最終的な選好意思決定に先立って,選好対象を自動的かつ瞬時に検出するための視覚的注意バイアスが生じる可能性について心理学実験により検討した。実際に,顔選好は100ミリ秒程度の間で瞬時に評価され,好ましい顔に対しては視覚的注意の捕捉が生じ,その顔をより意識的に知覚しやすくなるバイアスが存在することが明らかになった。これらの研究結果については,国内外の学会で発表を行い,すでに海外ジャーナルへの投稿を行った。 第3に,最終的な選好評価が決定するまでの認知過程の背後にある脳神経基盤について神経科学的手法により検討した。特に,選好評価の決定において因果的な役割を持つ脳神経基盤を特定するために経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を導入し,選好評価への関連が指摘される内側前頭前野の神経活動を外部的に修飾することによって最終的な選好評価への影響を検討した。結果として,内側前頭前野の皮質興奮性を抑制すると,芸術絵画に対する美的選好が低減することが明らかになった。こうした研究結果については,Frontiers in Human Neuroscienceに掲載され,美的選好とその脳神経基盤についての総説論文は,生理心理学と精神生理学に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
連続フラッシュ抑制を用いた無自覚的選好評価過程の実験心理学的検討については,すでに独自の実験手法が確立しており,既に国内で査読なし論文発表を行った。今後,速やかに研究成果を国際論文誌への投稿を行う予定である。選好対象への視覚的注意捕捉現象については既に国際論文誌への投稿を行っており,国内外の学会で研究成果を発表している。選好評価の脳神経基盤の検討については,国際論文誌と国内論文誌にそれぞれ論文が掲載されており,現在,さらに詳細な神経科学的メカニズムを検討する実験を遂行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的な選好意思決定が生じるまでの選好評価過程については,今後その潜在認知メカニズムをさらに詳細に明らかにするために,脳波計測や経頭蓋直流電気刺激を導入し,心理的現象とその神経基盤の両面から検討していく。加えて,最終的な意思決定が生じた後の選好形成過程についても,脳波計測によって意思決定後の選好変化の背後にある脳神経基盤を特定する研究を進め,選択と選好の循環的な連鎖の中で安定的な選好が形成される認知神経科学的メカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(10 results)