2015 Fiscal Year Annual Research Report
低周波MHD揺動の高エネルギー粒子閉じ込めへの影響
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15J08296
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 裕之 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 核融合炉 / 高エネルギー粒子 / プラズマ加熱 / 磁気島 / 静電ポテンシャル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,まず,大型ヘリカル装置(LHD)高イオン温度実験における中性粒子ビーム入射(NBI)加熱の解析を行い,3次元磁場配位系における高エネルギー粒子に関連する物理現象の解明を進めることで,運動論的シミュレーションコードGNET-TDの整備と拡張を行った.これまでに前例の無い,不純物イオンとプラズマ時間発展効果を同時に取り入れたシミュレーションをLHD高イオン温度実験プラズマに適用し,ペレット入射時の高速イオン分布関数の急激な変動や,粒子種ごとのNBI加熱吸収分布を明らかにするなど,これまで未解明であったLHD高イオン温度実験における電子・イオン加熱を解明することに初めて成功した.また,揺動電磁場による高エネルギー粒子閉じ込めへの影響を解明する第一歩として,LHDプラズマにおいて静的な磁気島が発生した場合のNBI高速イオンの振る舞いと,閉じ込め特性の解明に取り組んだ.共鳴磁気面に磁気島を発生させる3次元摂動磁場をシミュレーションコードに取り入れ,従来コードとのベンチマークをとった上で,LHDプラズマへ適用し,接線入射NBIによって発生した高速イオンが磁気島の位相に依存した局在化のパターンを示すことを示した.これによって,ヘリカルプラズマにおいて非接触プラズマの実現に有効と期待されている磁気島が,高エネルギー粒子閉じ込めへ与える影響を初めて明らかにした.さらに,高速イオンが局在化することで生じる静電ポテンシャルが,高速イオン閉じ込めおよびプラズマ粒子束に与える影響の解明に取り組んだ.高速イオン存在下における電子密度の揺動を求め,静電ポテンシャルを算出する解析コードを開発し,適用した.これまでに,磁気島を発生させる摂動磁場と同じモード数をもつ静電ポテンシャル構造が生じ,熱粒子の拡散を増大させることが明らかになりつつある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初計画していた通り,運動論的シミュレーションコードGNET-TDの拡張と従来コードとの比較によるベンチマークを完了し,様々なプラズマ条件へ適用して解析を進めた.磁気流体的に安定なLHD実験の解析では,静的な磁気島を発生させる摂動磁場の位相に依存して,磁気ミラー捕捉を受けない高速イオンが実空間上で局在化することを示した.これによって,高速イオンのピッチ角および摂動磁場との相対的位置関係と高速イオン挙動との関係性の解明を進めることができた.更に,計画を変更し,高速イオンの局在化に伴って発生する静電ポテンシャルに着目し,その構造解析と影響の調査を進めた.これは,本研究の目的である電磁場揺動の成長段階を含めた高速イオン閉じ込めの解明を,正確な粒子軌道に基づいて進めるためには,この3次元的な静電ポテンシャルの解析と導入を行い,その影響を明らかにすることが必要不可欠であると判断したためである.このために,静電ポテンシャルの解析モデルと解析用コードの開発を行い,トカマクプラズマへ適用した.結果として,摂動磁場と同じモード数を主要なモードとして持つ静電ポテンシャル構造が高速イオンによって生じることを明らかにした.このような,磁気島存在下の高速イオンの実空間分布に着目した研究はこれまで行われていない.当初計画していた,摂動磁場のモード数および回転周波数への高速イオン閉じ込めの依存性に関する調査は,次年度に繰り越すこととした.一方で,次年度に予定していた,摂動との相対位置関係やピッチ角に依存した高速イオン挙動の解明を一部進めることができた.これらを総合して,本研究は概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,本研究によって,トロイダルプラズマに磁気島が存在する場合に高速イオンが実空間上で強く局在し,静電ポテンシャル構造を作り出すことが明らかとなってきている.今後は,まず,運動論的シミュレーションコードGNET-TDをさらに拡張し,軌道追跡計算に3次元的な静電ポテンシャルの効果を取り入れる.高速イオン分布のシミュレーションと静電ポテンシャルの解析を反復的に行うことで,自己無撞着な高速イオン分布関数を求める.これにより,高速イオン自身が作り出す静電ポテンシャルが高速イオン挙動に与える影響を明らかにすることができる.また,プラズマ消失につながる低モード数の磁気島が発生した場合など,摂動のモード数に着目した解析も行う.次に,現実の新古典テアリングモードと同様の,有限の回転周波数を持つ磁気島を仮定した解析を行う.このために,まずは高速イオン実空間分布の磁気島回転周波数への依存性を調査する.その上で,LHD実験解析での知見を活かし,大規模並列計算を用いた非定常シミュレーションによって,回転する磁気島存在下の高速イオン分布および静電ポテンシャルを求め,磁気流体的不安定性による高速イオン閉じ込めへの影響を解明する. さらに,より具体的な解析として,ITERやJT60-SAなどの現実的な磁場配位において新古典テアリングモードが発生した場合の高速イオン閉じ込め,特に,核燃焼プラズマの維持に必要不可欠であるアルファ粒子閉じ込めを評価する.最終的に,磁気流体安定性解析コードとの結合による統合的な高速イオン閉じ込め解明を目指す.
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Integrated transport simulations of high ion temperature plasmas of LHD2015
Author(s)
S. Murakami, H. Yamaguchi, A. Sakai, A. Wakasa, A. Fukuyama, K. Nagaoka, H. Takahashi, H. Nakano, M. Osakabe, K. Ida, M. Yoshinuma, M. Yokoyama and LHD experiment group
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Journal Title
Plasma Physics and Controlled Fusion
Volume: 57
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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