2015 Fiscal Year Annual Research Report
細孔制御したハニカム多孔質体による沸騰限界熱流束向上メカニズムの解明とその応用
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15J08342
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
丸岡 成 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 沸騰冷却 / ハニカム多孔質体 / 毛管力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、4MW/m2級の高熱流束除熱を実現する新たな冷却手法の確立である。福島原子力発電所の事故を契機に上記目標の達成が切望されている。申請者は、これまでに多孔質部と蒸気排出孔部(以下、セル)からなる格子状構造体(以下、ハニカム多孔質体)を発熱面上に装着することで、沸騰冷却限界を未装着時の2.5倍(2.5MW/m2)まで向上させた。この限界向上要因として、①多孔質部の毛管力による液体供給、②セルからの迅速な蒸気排出などが挙げられる。本研究では、冷却限界向上に関わる各素過程を明確化し、機構論的モデルを構築する。最終的には、モデルと材料科学の知見を導入し、作製した最適幾何形状・細孔構造のハニカム多孔質体により、目標の達成を目指す。 当該年度は、冷却限界向上に関わる液供給メカニズムである(1)毛管力による液供給効果と(2)セルに直接流入する液供給効果の素過程を分離した要素実験の実施から、各素過程が冷却限界向上に与える寄与度を把握することに重点を置き、研究を進めた。その結果、具体的に以下の研究成果を得た。 (1)について 毛管力による液供給効果の抽出実験(以下、毛管抽出実験)装置を作製した。実測値と申請者が提案する冷却限界発生に関する一次元モデルと比較検討を行い、毛管抽出実験結果をモデルによりよく説明できることがわかった。さらに、限界発生時の時々刻々の多孔質体内部の気液相変化現象について電気抵抗法を用いて検討することで、実現象とモデルがよく一致することを確認した。 (2)について セルに直接流入する液供給効果の抽出実験装置を作製し、発熱面上から発生する蒸気流束とセルに流下する液流束との関係を明らかにした。加えて、その関係と上述のモデルとを組み合わせることで、セル内部に流入する液体をより効果的に蒸発させることがさらなる冷却限界向上には重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況を(1)当初の研究計画との比較、(2)研究成果内容、(3)成果発表の3点で判断した結果、「当初の計画以上に進展している。」という区分で自己評価した。各項目の内容について、具体的には以下に示す通りである。
(1)当初の研究計画と比較して・・・当初の計画通り、本年度は冷却限界向上に関わる2つの液供給メカニズムに着目し、素過程を分離した要素実験を行い、各素過程が冷却限界向上に与える寄与度について検討した。 (2)研究成果について・・・上述の研究を実施した結果、申請者が提案する冷却限界発生に関する一次元モデルにより、実現象をよく説明できることがわかった。すなわち、将来的に最適な幾何形状・細孔構造のハニカム多孔質体を製作する上で、本モデルが設計指針として有効であることが示唆された。この結果は本研究課題の中でも特に重要な位置づけを占める知見である。また、セル内部への流下液体を効率よく蒸発させることがさらなる冷却限界の向上に繋がるという知見を得た。以上のように、本年度は本研究課題の根幹である冷却限界向上要因の明確化に関する重要な知見が得られるという当初の期待以上の研究成果であった。 (3)成果発表について・・・本研究に関わる成果は積極的に発表を行った。国内学会にて2件の口頭発表を行い、論文としては、日本機械学会編日本機械学会論文集に投稿中(2016年3月18日投稿)である。上述の口頭発表では2件ともに学会賞を頂いた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究実績を踏まえ、今後は具体的に以下の方策で推進する。
(1)ハニカム多孔質体の幾何形状および細孔構造が冷却限界に与える影響の検討・・・ハニカム多孔質体の幾何形状および細孔構造が冷却限界に与える影響について実験的に検討する。具体的には、幾何形状はハニカム多孔質体の構造体高さ(板厚)、セル寸法(セル幅)、多孔質壁の厚さ(壁厚)を、細孔構造は細孔径および透過係数を変化させて上記検討を行う。幾何形状・細孔構造制御は下に示す(2)項の手法を用いて行う。実測値と本年度提案した冷却限界発生に関する一次元モデルの試算結果を比較し、必要に応じて、モデルを修正する。上述の検討結果から冷却限界向上に関する機構論的モデルの構築を目指す。 (2)ハニカム多孔質体の製造手法の検討・・・ハニカム多孔質体の幾何形状・細孔構造制御を可能とするハニカム多孔質体製造手法について検討する。現状、3Dプリンタにより作製した樹脂鋳型にセラミック粉体、造孔材を分散させたスラリーを鋳込んで得られた成形体を焼成するという手法を考えている。また、本手法により作製したハニカム多孔質体の細孔径および透過係数を測定する装置を作製し、望んだ細孔制御が実現されているかを評価する。 (3)二層構造ハニカム多孔質体による沸騰冷却限界の向上・・・本研究の最終目標である二層構造ハニカム多孔質体による4MW/m2級の冷却限界向上を目指す。(2)項で確立した手法をさらに改良し、端面の細孔構造を制御することにより、二層構造ハニカム多孔質体の製造手法を確立する。現状、二種類の造孔材を用いて、磁場をかけることで、配向構造を制御することで、端面の細孔制御を行う予定である。(1)項で構築した機構論的モデルにより計算される最適な幾何形状・細孔構造を有する二層構造ハニカム多孔質体を上述の製造手法で作製し、上記目標の達成を目指す。
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Research Products
(4 results)