2016 Fiscal Year Annual Research Report
細孔制御したハニカム多孔質体による沸騰限界熱流束向上メカニズムの解明とその応用
Project/Area Number |
15J08342
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
丸岡 成 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 沸騰冷却 / 限界熱流束 / 限界熱流束向上 / ハニカム多孔質体 |
Outline of Annual Research Achievements |
高熱流束除熱の実現に向けて、ハニカム多孔質体装着時の冷却限界向上に寄与する素過程及びハニカム多孔質体の製造法に関して検討した。H28年度の研究成果をまとめると、以下の通りである。 (1)沸騰冷却冷却限界向上に関わる素過程に関する検討 ハニカム多孔質体装着時の冷却限界向上に寄与する素過程として、①毛管力による液体供給と②蒸気排出孔に直接流入する液体供給の2つがある。昨年度までの研究から、蒸気排出孔に直接流入する液体をより効率的に蒸発させることで、冷却限界が向上することが示唆された。そこで、本年度は蒸気排出孔部の伝熱面濡れ性の向上が冷却限界向上に与える影響について検討した。具体的には、蒸気排出孔部の伝熱面上にナノ粒子をコーティングしたナノデポジット伝熱面を作製し、伝熱面濡れ性を向上させた。ナノデポジット伝熱面を使用したプール沸騰実験を行った結果、ナノデポジット伝熱面の方がナノ粒子をコーティングしていない伝熱面よりも、ハニカム多孔質体装着時の冷却限界が向上する結果を得た。この結果から、蒸濡れ性を向上させることで、蒸気排出孔に直接流入する液体をより効率的に蒸発させることができ、冷却限界が向上することがわかった。 (2)ハニカム多孔質体の製造方法の検討 冷却限界向上に起因すると考えられる幾何形状や多孔質体内部の細孔構造を自由に制御することを目的に、ハニカム多孔質体の製造方法について検討を行った。具体的には、3Dプリンタにより作製した樹脂でできた鋳型にセラミック粉体と造孔材を分散させたスラリーを鋳込み、得られた成形体を焼成するという手法を提案し、有効性について検討した。その結果、本手法により、ハニカム多孔質体の幾何形状の制御が可能となった。また、造孔材にカーボンファイバーを用い、磁場を印加させることで、細孔の配向性を制御することができ、多孔質体内部の細孔構造の制御も可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、概ね順調に進展している。ハニカム多孔質体装着時の冷却限界向上に寄与する素過程として、蒸気排出孔に直接流入する液体供給に着目し、ナノ粒子コーティング層を導入することで、蒸気排出孔に直接流入する液体をより効率的に蒸発し、冷却限界の向上が可能となる興味深い結果が得られた。ハニカム多孔質体の製造方法について、3Dプリンタにより作製した樹脂でできた鋳型にセラミック粉体と造孔材を分散させたスラリーを鋳込み、得られた成形体を焼成するという手法を提案し、有効性について検討した。その結果、本手法により、ハニカム多孔質体の幾何形状の制御が可能となった。また、造孔材にカーボンファイバーを用い、磁場を印加させることで、細孔の配向性を制御することができ、多孔質体内部の細孔構造の制御も可能となった。今後、作製したハニカム多孔質体を用いたプール沸騰実験での評価だけでなく、冷却限界向上に関わる透過係数や細孔径などの多孔質体内部の細孔構造の特性を評価するための試験機を作製し、理論的な性能評価についても検討したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究実績を踏まえ、今後は具体的に以下の方策で推進する。 (1)ハニカム多孔質体の幾何形状および細孔構造が冷却限界に与える影響の検討・・・本年度検討したハニカム多孔質体製造方法を用いて、ハニカム多孔質体の幾何形状および細孔構造が冷却限界に与える影響について実験的に検討する。具体的には、幾何形状はハニカム多孔質体の構造体高さ(板厚)、セル寸法(セル幅)、多孔質壁の厚さ(壁厚)を、細孔構造は細孔径および透過係数を変化させて上記検討を行う。また、冷却限界向上に関わる透過係数や細孔径などの多孔質体内部の細孔構造の特性を評価するための試験機を作製し、ハニカム多孔質体の細孔構造の特性が冷却限界向上に与える影響について検討する。実測値と昨年度提案した冷却限界発生に関する一次元モデルの試算結果を比較し、必要に応じて、モデルを修正する。上述の検討結果から冷却限界向上に関する機構論的モデルの構築を目指す。 (2)二層構造ハニカム多孔質体による下向き伝熱面における沸騰冷却限界の向上・・・二層構造ハニカム多孔質体による冷却限界向上を目指す。本年度確立したハニカム多孔質体製造手法をさらに改良し、端面の細孔構造を制御することにより、二層構造ハニカム多孔質体の製造手法を確立する。現状、二種類の造孔材を用いて、磁場をかけることで、配向構造を制御することで、端面の細孔制御を行う予定である。構築した機構論的モデルにより計算される最適な幾何形状・細孔構造を有する二層構造ハニカム多孔質体を上述の製造手法で作製し、超高熱流束除熱の達成を目指す。
|
Research Products
(4 results)