2015 Fiscal Year Annual Research Report
Rad51リコンビナーゼによるDNA鎖交換反応の分子機構
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15J08408
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 健太郎 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 相同組換え / Rad51 / Swi5-Sfr1 / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 分裂酵母Rad51と活性化因子Swi5-Sfr1複合体との相互作用解析 活性化因子Swi5-Sfr1とRad51の相互作用を詳細に理解するために、Swi5-Sfr1複合体との相互作用に欠損のあるRad51変異体の解析を行っている。今年度は、Rad51-単鎖DNAフィラメントの表面に露出していると予想される156アミノ酸残基をそれぞれアラニンに置換したRad51変異体を作製し分裂酵母の遺伝学的性質を利用してスクリーニングを行った。その結果、Swi5-Sfr1複合体との相互作用を欠損していると予想されるRad51変異体が9種得られた。 2. Swi5-Sfr1複合体によるRad51活性化機構のリアルタイム解析 相同組換えの中心的な反応であるDNA鎖交換は多段階反応であり、(1)Rad51リコンビナーゼが単鎖DNAに結合しヌクレオプロテイン複合体を形成、(2)相同二重鎖検索とDNA3本鎖中間体形成、(3)DNA鎖交換の3つの段階が想定されている。Swi5-Sfr1複合体はRad51リコンビナーゼの活性化因子であるがこの多段階反応の中のどの段階でどのようにRad51に作用しているか現在全く不明である。これを明らかにするためにDNA鎖交換反応のリアルタイム解析系の開発を行った。現在までにオリゴDNAに蛍光基を付加し蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理を利用し、DNA3本鎖中間体形成とDNA鎖交換のリアルタイム観測が可能となった。解析の結果、Rad51依存DNA鎖交換反応は2つの遷移状態(中間体)を経て進行すること、更にSwi5-Sfr1複合体はRad51のATPase活性依存的に2つの中間体遷移を促進しDNA鎖交換反応を活性化していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたSwi5-Sfr1複合体との相互作用欠損Rad51変異体のスクリーニングをほぼ完了することができた。具体的には156種の変異体からSwi5-Sfr1複合体との相互作用に特異的に欠損があると期待されるものが9種得られた。更にFRETの原理を利用して、Rad51によるDNA鎖交換反応をリアルタイムに観測する系を開発し、得られた結果を反応速度論的に解析することで多段階反応であるDNA鎖交換の各ステップを定量的に議論することを可能にした。そしてこの系を利用して、新たにSwi5-Sfr1複合体がRad51のATPase活性依存的にDNA3本鎖中間体に作用してDNA鎖交換反応を促進していることを明らかにした。上記のように初年度に計画していた実験はおおむね完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Rad51によるDNA鎖交換反応のリアルタイム解析 27年度までにリアルタイム解析によって明らかになったSwi5-Sfr1複合体によるDNA鎖交換反応中期過程の促進メカニズムについてまとめて論文を執筆する。またRad51活性化因子としてSwi5-Sfr1複合体のほかにRad51パラログやBrca2が知られている。しかしながら、これらの活性化因子によるDNA鎖交換反応の促進メカニズムの詳細は明らかではない。そこで、新たに構築したリアルタイム解析系を用いてそのメカニズムを明らかにすることで、それぞれの活性化因子の相同組換え修復での役割分担を明らかにすることを目指す。そのためにまずそれぞれのタンパク質の発現・精製系の検討を行う。 2.分裂酵母Rad51と活性化因子Swi5-Sfr1複合体との相互作用解析 27年度までに156種のRad51変異体から遺伝学的スクリーニングによって、9種のSwi5-Sfr1複合体との相互作用が欠損していると予想されるRad51変異体を得ることができた。今後はまず、得られた変異体のin vivo表現型解析、変異体タンパク質を精製し生化学的解析、更に上記のリアルタイム解析を行ってRad51とSwi5-Sfr1複合体の相互作用の詳細を明らかにしていく予定である。また今回行ったスクリーニングではSwi5-Sfr1複合体とは独立して働くRad51活性化因子であるRad55-Rad57複合体との相互作用が欠損していると予想されるRad51変異体も得ることができた。現在Rad55-Rad57複合体によるRad51活性化メカニズムを明らかにするために生化学的解析やリアルタイム解析に必要なRad55-Rad57複合体タンパク質の精製系の構築を試みる。
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