2016 Fiscal Year Annual Research Report
単純ヘルペスウイルスの核膜通過過程における機能性RNAの探索及び機能解明
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15J08446
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古旗 祐一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス / 核膜 / 染色体 / Us11 |
Outline of Annual Research Achievements |
単純ヘルペスウイルスは、ヒトに脳炎、性器ヘルペス、皮膚疾患、眼疾患、小児ヘルペスなど、多様な病態を引き起こす医学上極めて重要なウイルスである。そのゲノムには80個を超える遺伝子がコードされており、中でもUs11は、PKRやRIG-I等を阻害する免疫抑制因子として、盛んに研究されているウイルスタンパク質の一つである。しかしながら感染細胞における機能には未解明な部分が多かった。第1年度の成果においてUs11タンパク質が感染細胞において核辺縁部に強く局在し、ウイルス粒子核膜通過複合体と相互作用することが明らかとなっており、採用第2年度はその意義について解析を行った。 感染細胞において核辺縁部に集積する構造体として宿主染色体が知られており、ウイルス粒子の核膜通過の障壁となると考えられている。ウイルス粒子の核膜通過複合体は核辺縁部における宿主染色体の局在を部分的に排除することが知られているが、その構成因子と宿主染色体の直接的な相互作用は示されておらず、Us11がその機能を担うのではないかと予想した。本仮説を検証するために、感染細胞におけるUs11と宿主染色体の局在を免疫蛍光抗体法により解析したところ、核辺縁部において非常によく共局在する様子が観察された。さらにUs11欠損ウイルス感染細胞において宿主染色体の局在を観察した。その結果、野生体ウイルスでは、宿主染色体が断片的に局在しており、ウイルス粒子産生の場が核膜に近接する様子が観察された。一方で、Us11欠損ウイルス感染細胞では宿主染色体が核膜を覆うように局在し、宿主染色体によってウイルス粒子産生の場と核膜が遮られているように見える細胞が目立った。以上の結果より、Us11は宿主染色体とウイルス粒子産生の場の局在を制御することにより、効率的なウイルス粒子の核膜通過に寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度得られた成果は当初予定したものとは異なるが、Us11タンパク質の核膜周辺における局在に関する知見は非常に興味深い知見であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかとなった結果は未解明な部分の多かった感染細胞における宿主染色体の局在制御機構を明らかとするものであり、非常に興味深い知見である。次年度は染色体の局在制御に着目してより詳細な解析を行う予定である。
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