2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J08497
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 智子 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 曾禰好忠 / 古今和歌六帖 / つらね歌 / 古今和歌集 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度に発表した論文「曾禰好忠の「つらね歌」」では、曾禰好忠の詠んだ連作形式の和歌である「つらね歌」の表現と、その成立の問題、さらには三種ある「つらね歌」がそれぞれいかなる契機のもとに詠まれたものであるかを検討し、「つらね歌」の和歌史上の意義について考察した。また、「つらね歌」中の歌語・表現・主題には、他の好忠の歌で繰り返し用いられている表現や、漢詩・長歌で常套的に用いられた表現等がみられる一方で、「音」への関心に基づく特有の表現が見出だせることを指摘した。 また、同じく今年度に発表した論文「円融院子の日の御遊と和歌―御遊翌日の詠歌を中心に―」では、円融院が営んだ子の日の御遊に関わって詠まれた様々な歌の解釈に再検討を加えた。従来これらの歌については個別に詳細な分析が行われてきたが、それらを御遊の次第と関わらせて読み解くことで、歌の新たな解釈の可能性を提示できたと考えている。さらに、御遊の歌会の場から曾禰好忠が追放された事件も含め、御遊の次第についてより厳密、具体的に分析し、紫野という地で子の日の御遊が行われたことの意義を探ることで、円融院子の日の御遊の史的意義や、曾禰好忠の和歌史上における位置づけについても考察した。 今年度に行った学会発表「古今和歌六帖の題と配列について――第五帖「雑思」項を中心に――」では、『古今和歌六帖』がどのような題を立て、またそれらをどのような秩序のもとに配列しているのかについて分析を加えた。『古今和歌六帖』が、勅撰集である『古今和歌集』の配列に学びつつも、独自の基準のもとに題を配列していることを指摘し、類題和歌集としての『古今和歌六帖』の特徴の一端を明らかにできたと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度には、写本調査を含めた『古今和歌六帖』の研究を中心に進めていくことを予定していたが、曾禰好忠に関する研究が順調に進んだため、先に曾禰好忠に関する論文の執筆に集中した。その結果、曾禰好忠の「つらね歌」に関する論文を2本発表することができた。 また、今年度末には『古今和歌六帖』に関する学会発表を行ったが、会場からの反響も大きく、様々な質問や意見をうけて、自身の論をより充実したものにすることができた。この学会発表の成果に基づいて新たに論文を執筆中であり、近いうちに中古文学会の学会誌『中古文学』に投稿できる見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2016年度には、『古今和歌六帖』を中心に、十世紀の和歌史について研究を行っていきたい。 具体的には、2015年度末に行った学会発表の成果に基づいて『古今和歌六帖』第五帖「雑思」項の題と配列に関する論文を執筆し、『中古文学』に投稿する予定である。 さらに、上記の論文を投稿したのち、『古今和歌六帖』歳時部に関する論文を執筆し、『国語と国文学』に投稿する予定である。 それらの投稿論文の内容に基づき、2016年度のうちに博士論文をまとめたいと考えている。
|
Research Products
(4 results)