2015 Fiscal Year Annual Research Report
大規模脳モデルによる感覚と運動の相互構造化過程の構成論的解明
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15J08502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 敬子 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 脳シミュレーション / 構成論的アプローチ / 感覚運動学習 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、発達過程における感覚と運動の相互構造化を再現し、大脳皮質の解剖学的結合構造が情報処理の発達に与える影響を明らかにすることである。本年度は、その第一歩として、感覚運動学習について検討可能なシステムの構築および評価方法の検討を行った。 システムの構築としては、第一に、当研究室で開発してきた赤ちゃん型身体モデルの動力学シミュレーションと大規模脳シミュレーションを、相互に連動可能なシステムへと拡張した。これまで、赤ちゃん型身体モデルの動力学シミュレーションと大規模脳シミュレーションは独立に稼働してきたが、今回の拡張によって感覚運動ループの閉じた系になった。第二に、大規模脳シミュレーションから頭皮上脳波に相当する神経活動を計算するシステムを新規に開発した。赤ちゃんの脳活動計測は大多数が頭皮上脳波などの大局的な信号を捉えたものであるため、頭皮上脳波に相当する信号を算出することにより、生体との比較を可能にした。今回構築したシステムは、頭皮上脳波の空間パターンに大きく影響すると考えられている皮質溝の形態情報を考慮している点で、技術的にも新しいものである。 学習結果の評価方法としては、感覚運動の統合学習に対する評価指標の検討を行った。ニューラルネットワークが入力の統計的特徴を自身の結合構造に埋め込んだかどうかを評価するために、ニューロンの自発発火や、ランダムな入力を与えたときの発火状態との差異を測る方法が提案されている。しかし、この方法の有用性はこれまで概念的な議論にとどまっていた。そのため、ニューラルネットワークを用いて実際に計算することで、統合学習に関する特徴量の定量的な検討を行った。加えて、ネットワークの構造特徴に関する知見の収集を行い、来年度に予定している、大脳皮質の解剖学的結合構造を定量的に評価し、体系的に変更する方法について基礎的な準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体と脳シミュレーションとの比較を行うために解決すべき複数の課題に直面したが、新たなシステムを開発することで、感覚運動学習の再現および評価のための準備を整えた。また、ネットワーク理論を学び、ネットワークの動的変化に関わる構造特徴の候補を選定した。 年度内に対外的な研究発表はなかったものの、今年度取り組んだシステムおよび統合評価指標はそれ自体に学術的価値が高いこと、および来年度への準備が着実に進んでいることから、研究としては着実に進展しており、概ね順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、感覚運動ループを通じた感覚運動情報の学習を行う。学習結果については、今年度構築した頭皮上脳波シミュレーションを利用し、ミクロスケール(ニューロンレベル)およびマクロスケール(頭皮上脳波)の両側面から考察する。さらに、ヒトMRIデータから抽出した大脳皮質の解剖学的結合構造を基準として、ネットワーク構造を体系的に変更し、学習結果がどのように変化するかを調査する。
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