2017 Fiscal Year Annual Research Report
オキシトシン作用機序を手がかりに新たな自閉症治療標的を示す橋渡し研究
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15J08536
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤(ベナー) 聖子 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2019-03-31
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Keywords | オキシトシン / ASD / 社会性行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の中核症状治療薬の有力候補であるオキシトシンの薬理作用機序を明らかにし、より効果的な 投薬条件や治療候補分子の開発にむけた知見を提供することを目的としている。H29年度における研究実績の概要は下記の通りである:(1)全自動で薬剤投与と行動試験が実施可能な新技術の確立に成功し、従来の試験系よりもはるかに高精度で薬剤投与影響の抽出を可能とした。さらに、この技術を応用し、マウスにおいて再現性・感受性の高いオキシトシン投与効果指標となる社会性行動を同定した。(2)複数の自閉症モデルマウス(既存の自閉症モデルマウスとして扱われているオキシトシン受容体欠損マウス、SHANK2欠損マウス、およびSHANK2欠損マウスに遺伝子Xの欠損を掛け合わせたダブルコンジェニックマウス)の表現型解析とオキシトシン投与効果評価を進め、各モデルマウスにおいて特異的な表現型、および共通する表現型についての結果を得た。H30年度は、得られた結果を土台として、より詳細な表現型解析とオキシトシン投与効果評価を行い、共同研究者らによる臨床研究からの知見と合わせて結果をまとめる予定である。(3)オキシトシンの単回vs連続投与の違いを示す神経基盤について、共同研究者らによるオキシトシン単回投与および長期連続投与のヒトfMRI画像解析の結果に対応する実験として、野生型マウスMedial prefrontal cortexにおけるオキシトシン関連・神経活動関連・興奮性伝達に関わる遺伝子発現を定量解析した結果をまとめた(第28回日本行動神経内分泌研究会にて発表、論文投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は、筆頭著者論文1報(Behav Pharmacol. 2018 Feb;29(1):1-12.)、および共著者論文2報(Accepted by Molecular Psychiatry, Mar 2018;JCI Insight. 2017 May 18;2(10))の発表に携わった。また、オキシトシンの単回投与および反復投与による脳への影響についてまとめ、学会発表(第28回日本行動神経内分泌研究会)を行い、論文投稿中(筆頭著者)である。 当該分野における知見としてはこれまでに報告のない、全自動で薬剤投与と行動試験が実施可能な新技術の確立に成功し、マウスにおいて再現性・感受性の高いオキシトシン投与効果指標となる社会性行動を同定した。また、中間表現型として同定された分子マーカーの遺伝子改変モデルを含めた、複数の自閉症モデルマウスの表現型解析を行い、新たな知見を見出した。これら新たな知見等について、論文発表に向けた追加解析のため、遺伝子改変動物について理化学研究所バイオリソースセンターに作製を依頼済みであり、H30年度中に解析からまとめまでを順調に行えるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、まとめの年として、昨年度までに得られた結果を土台に論文発表に向けたデータ収集を行って、結果をまとめる。ヒトとマウスに共通するエビデンスを引き続き探索し、接的に臨床的評価に応用可能な定量的指標としてヒトとマウスとで共通してオキシトシン投与効果や行動表現型を反映する分子マーカーを絞り込む。以上より、未だ存在しない客観的診断マーカーによる明確な評価基準を提示し、治験への明確な方向付けを達成する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Effect of intranasal oxytocin on the core social symptoms of autism spectrum disorder: A randomized clinical trial.2018
Author(s)
Yamasue H, Okada T, Munesue T, Kuroda M, Fujioka T, Uno Y, Matsumoto K, Kuwabara H, Mori D, Okamoto Y, Yoshimura Y, Kawakubo Y, Arioka Y, Kojima M, Yuhi T, Owada K, Yassin W, Kushima I, Benner S, Ogawa N, Eriguchi Y, Kawano N, Uemura Y, Yamamoto M, Kano Y, Kasai K, Higashida H, Ozaki N, Kosaka H.
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Journal Title
Molecular Psychiatry
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Association of impaired neuronal migration with cognitive deficits in extremely preterm infants.2017
Author(s)
Kubo KI, Deguchi K, Nagai T, Ito Y, Yoshida K, Endo T, Benner S, Shan W, Kitazawa A, Aramaki M, Ishii K, Shin M, Matsunaga Y, Hayashi K, Kakeyama M, Tohyama C, Tanaka KF, Tanaka K, Takashima S, Nakayama M, Itoh M, Hirata Y, Antalffy B, Armstrong DD, Yamada K, Inoue K, Nakajima K.
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Journal Title
JCI Insight.
Volume: 2(10)
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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