2015 Fiscal Year Annual Research Report
地域課題への解決行動を促すモバイルアプリケーションの参加型デザイン機構
Project/Area Number |
15J08542
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹尾 知世 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 参加型デザイン / コンテクストアウェア / スマートフォン / アーバンコンピューティング / クラウドソーシング / シビックコンピューティング |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、まち単位で定義可能な場所連動型地域支援アプリケーションと場所連動型地域支援に必要な通知を住民参加型で作るためのデザイン環境の設計及び開発を行った。さらに、1つの地域を対象に、システムが地域に与える効果を探索的に評価するための実証実験を行い、システムの特性・有用性・欠点を明らかにした。加えて、システムの発展的活用法について基礎研究を行った。 1.プロトタイプの開発に関しては、まち歩きワークショップの参与観察および地域住民・まちづくり専門家へのヒアリングを基にシステム設計を行った。この設計の過程で明らかとなった機能や地域に導入する際の課題については、CHI’15のDoctoral Consortiumで口頭発表を行った。 2.プロトタイプを利用した基礎的な実証実験に関しては、つくば市の1地区を対象に、住民参加型の通知制作と1ヶ月間日常生活の中で通知の受信を体験してもらう実験を実施した。実験を通して、コンテクストアウェア通知が住民の意識や行動に影響を与え、地域とのつながりを深めるきっかけになったことを定量データおよび定性データから明らかにした。この成果は論文誌に投稿した(2017年に掲載が確定)。 3.システムの発展的活用法に関する基礎研究として、(1)「現場での複雑な活動を通知化するためのレシピフォーマット」(2)「通知の受信・返信ログの蓄積を活用した素早く回答されやすい通知のデザイン支援」(3)「クラウドソーシングによる通知の生成手法」を行い、(1)については国際会議で口頭発表した他、(2)(3)は来年度に国際会議での口頭発表が確定している。これらは、2の実験フィールドに留まらない活用の可能性を探求するものであり、コンテクストアウェア通知の汎用的活用が進んでいない問題や地域の中で公益性の高い活用に向けての課題についての議論を深める上で多くの洞察を提供すると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短期間小規模実験に耐えうるプロトタイプを開発し終えた。また短期間小規模での実験を実施し、得られたデータから有用な結果を導くことができた。このうち3-(1)の成果は国際学会で口頭発表を終え、3-(2),(3)についても成果の発表が確定している。ただし、2の実験結果をまとめた論文においては執筆を終えているものの、投稿中であり、採録が決定していない(2017年に掲載が確定した)。また計画では、次年度に3拠点で開発したシステムを用いて3ヶ月間の実験を予定しており、今年度中に実験準備を完了させる予定であったが、開発したプロトタイプは電池の消耗等の問題を抱えていることが明らかになっており、長期的な利用を実現するためこれらの問題をまず解決しシステムの改良を行うことになった。これらの状況を総合し、当初の計画を変更する必要が出てきたものの、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画ではシステムを利用した3拠点での実験を中心として研究を進める予定であったが、システムの改良の重要性から、計画を一部変更し、システムの一般利用実現に向けた整備を優先する。システムの公開によって潜在的なシステム利用者を発掘し、新規性のある地域に根付いたシステム活用に向けて共同実験を実施する。 平成28年6月までに、長期間利用可能な動作の安定したシステムの実現に向けて改良を行った上で、システムを一般公開するためのホームページおよびシステムの一般利用を想定したデータ蓄積用のサーバの整備を行う。その後、システム利用者と実験計画を打ち合わせ、実証実験を実施する。実験の成果は学会で発表するとともに、ホームページ上や地域のイベントでも実験の推移や成果物を広く公開し、住民や潜在的なシステム利用者との接点を増やすことに注力する。
|
Research Products
(6 results)